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2006年の記事

 

 

 

 

 

中村建設(株)

 

■高分子ポリマーを活用した製品づくりの建設ベンチャー

業種:建設業
中村建設(株)

建設業を取り巻く経営環境は厳しい。建設投資が減少するとともに、入札制度が改正され競争が厳しくなっているからだ。山口県宇部市の中村建設(株)(創業1959年、従業者数20人)は、ダムなどの取水、排水工事やのり面の緑化事業とともに、自社製品を開発することで、業績を伸ばしている。

数多い製品の一つは、複数の高分子ポリマーを配合した、吸水性の高い素材を詰めた土のう「水ピタ」である。河川敷や海岸などに積み上げておくと、大雨や洪水の際に膨らんで浸水を防ぐ。膨張速度が速いだけではなく、海水でも膨らむのが従来品との違いだ。また、「ミズコシタロウ」は、建設現場などで発生する濁水のろ過装置である。小さな分子を吸着する、高分子ポリマーでできたフィルターによって、化学薬品を使わずに濁水を処理できるのが特長だ。

化学メーカーのエンジニアだった中村廣義社長が、家業である同社に入社したのは1975年。当時、建設業界は活況だったが、独自の技術がなければいずれ淘汰されると感じたという。こうした危機感のもと、中村社長は入社直後から高分子ポリマーを使った開発に着手した。高分子ポリマーに着目したのは、化学の専門誌で新素材として取り上げられていたからである。高分子ポリマーに関する研究や試作品の開発など、20年間の努力の末、現在の製品は完成した。

同社は製造を外注、販売を商社などに委託している。販売を始めた2000年以降、高い性能が評価され販路は順調に拡大した。NETIS(国土交通省の建設関係の新技術データベース)に登録され、製品の信頼が高まったことも追い風となった。現在では、自社製品の販売が売り上げの半分を占めている。

同社の製品開発が成功した背景には、中村社長の先見と20年にわたる努力がある。業況が苦しくなってから新規事業に乗り出そうとする企業は多いが、それでは遅すぎる。同社の取り組みは、業況が良いうちに将来を見据えて次の手を打っておくことの重要性を教えてくれる。
 



著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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