(株)ナカザ
■「プレスの固定観念にとらわれない」
業種:金属板プレス(深絞り加工)
(株)ナカザ
一枚の金属板に大きな圧力をかけて変形させることで、目的とする形状に加工する―これは継ぎ目のない底付き容器として様々な産業分野に活用される。この「深絞り加工」を得意とし、他社では難しかった難易度の高い加工の相談が持ち込まれ、大手メーカーの担当者がひっきりなしに訪れる中小企業がある。
昭和41年に設立されたナカザ(東京都、中座義行社長)がその企業。中座社長は証券会社の営業マンから転身して会社を立ち上げた。「プレス加工については何も知らなかった」という変わり種。近隣のプレスメーカーや金型メーカーへ営業に行く傍ら、様々な知識や技術を見て教わった。プレス一筋の職人にはない斬新な発想が生まれたのは、こうした経緯があるためか。
例えばステンレス板を135mm角、深さ125mmまで深絞りした八角形の原油パイプライン用流量計の筐(きょう)体を完成させた。同社に相談が来るまで10数社が断ったという高難度の加工で、この深さまで絞り、かつ絞った面の平たん度を出すのはさらに困難というのが常識だった。これを欧州の展示会に出展した際、「日本の企業にしかできない技術」と絶賛された。
この筐体は大手工業計器メーカーへの納入が始まっている。ほかにも薄さ0.2mmのアルミニウム板を、ほぼ直角に深絞りするといった画期的な技術が次々に生まれている。これは中座社長のアイデアと研究熱心な技術者がいるお陰。誰にも思いつかなかった加工法や加工技術が生まれたのは「方々で教えてもらったことを組み合わせただけ」と謙虚に語るが、休日にも1人出社して研究に没頭することもあるなど人並み外れた熱心さが陰にある。
現在はハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)など次世代の成長分野向けの加工に事業をシフト。また過去の苦い経験を薬に、1社集中でなく最低でも大手企業3社向けに売り上げの柱を確立するとの長年の目標も達成。プレスの固定観念にとらわれず、様々な情報を地道に収集したことが、こんな大きな成果を生む。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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