ナパック株式会社
■OEMから世界のブランドに
業種:粉末冶金製品の製造
ナパック株式会社
モノ作り中小企業にとって、OEM(相手先ブランド生産)は生きる糧として重要であり、経営拡大にも大いに貢献してきた。その意味ではOEMがわが国の中小企業にとって不可欠なツールであり、これからも必要だと考えられる。ただ、OEMだけに依存していたのでは、企業として大きな発展がないばかりか、発注先の経営に左右される場合もある。
ナパック株式会社(長野県駒ヶ根市)は電子機器メーカーや自動車部品メーカーに粉末冶金製品を納入している典型的な中小企業である。この粉末冶金技術を生かして希土類ボンド磁石を手掛けている。希土類ボンド磁石はネオジムやプラセオジムなど希土類系の磁性材料と、プラスチック粉を混ぜ合わせ圧粉成形や射出成形で固めたものだ。同社ではこの希土類ボンド磁石を大手の精密機器メーカーにOEMとして供給している。この技術を生かして生まれたのがサマリウム−コバルト(SmCo)ボンド磁石だ。
SmCoボンド磁石は、高磁力で高い耐食性が特徴。さらに熱減磁率が非常に低いため高温下で用いる磁気センサーなどに適しているという。「このような高性能磁石だけに、何とか自社ブランドとして育てたい」と考えた同社は、綿密な戦略を立てた。完成品の高性能化実現を武器に、ステッピングモーターやコアレスモーターなど超精密小型モーターを生産するメーカーにアプローチした。さらには音響機器や通信機器メーカーなどにも売り込みを図った結果、製品をテストしたメーカーから高く評価された。
こうして2000年にナパックブランドの磁石が生まれた。無論、OEMの経験は製品開発などあらゆる面で生きている。混ぜるプラスチックの種類、成形方法、磁場配向の有無などにより、多種多様な磁石の製作が可能になったのも、OEMで積み上げたノウハウが役立っている。このほか、SmCoボンド磁石を用いたモーターなどの試作開発も請け負っており「SmCoボンド磁石では世界のトップメーカー」(鈴木隆社長)と自負するほどブランド力も浸透してきている。
同社は現在「焼結機械部品の革新的生産技術の開発」という新たなテーマに取り組んでいる。経産省の戦略的基盤技術高度化支援事業の委託を受けており、ここでもOEMで培った技術やノウハウが生きることになりそうだ。「中小企業だからこそ特徴を出さなければ生きていけない」(同)が、同社はOEMでのノウハウや技術を生かした自社ブランドを持ち、特徴ある中小企業に脱皮したことになる。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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