ナプソン
■独自技術を生かす「しなやか経営」
業種:半導体ウエハーなどの検査装置製造等
ナプソン
中小企業の経営者は、会社を大きくして将来は株式公開を、という志を持つ人がかなりの割合を占める。その半面、そうではない個性派経営者もいる。「会社を大きくするより、自社独自の技術を生かしていきたい」というナプソン(東京都江東区)の結城忠信社長もその一人だ。
ただ、これは言うは易く行うは難し、で生半可な取り組みでは不可能。なぜかと言えば、技術と経営のバランスをとらないと会社は立ち行きにくいからだ。まず、認められる技術がなければだめだし、しかも顧客から信頼される会社でなければならない。その上で、組織を維持、発展させるインセンティブを社員と共有する必要がある。ナプソンはこれらの条件を克服し、自社の技術を生かした経営を行う、という理想を現実のものにしている。
電機メーカーの半導体エンジニアだった結城社長はまず、半導体ウエハーなどの検査装置を手掛けた。事業再編で半導体研究が廃止になったことが起業のきっかけだった。検査装置だから量産型ではなく「ニッチな業界、ニッチな商売」(同社長)だ。このため顧客との信頼関係こそが経営を左右する最大の要素になる。同社の特色の第1がこれである。
しかも自社で行うのは開発、設計、組み立てで、製造は外注化した。このため、一般のものづくり企業で大きな比重を占める生産コストよりは、精度などといった品質面に徹底的にこだわることができる。これが特色の2つ目。経営を成り立たせているこれらのベースが、独自技術を生かすという経営ビジョンに沿った形になっている。
同社は次第に口コミで評判になった。大手との取引の中で「次は液晶が来る」と同社長は確信し、液晶分野が事業として業界で本格化する最初の段階から業界に入り込んでいった。むろん当時、液晶の検査装置を手掛ける企業はほとんどなかった。顧客との取引の中から得た情報収集とこれを取り込む感度の高さの成果である。むろん信頼関係が基礎にあればこそだ。
だが今また、潮目が変わり始めた。半導体、液晶とも国内企業の投資が足踏み状態にあるため、同社は海外にシフトし始めている。中国参入に備えて中国人留学生を多数採用すると同時に2007年には大連理工大学内に共同研究室を設置した。学術研究と実用化は困難も伴うが、次なる参入分野を絞る上では必須。その第3の柱を太陽電池と踏む。狙いを慎重に見極めたら従来の分野に過度に固執せず、素早く他の展開を求める。技術を生かし続ける企業になるには、しなやかで堅実な経営手法が有効と言えそうだ。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。
▲ TOP
2008年の記事に戻る