鍋屋バイテック
■「仕事は寿司職人のように」
業種:機械要素部品からハイテク部品の製造
鍋屋バイテック
豊かな自然に囲まれ、やわらかい光が差し込む。建物は周囲の緑と調和し、澄んだ空気が満ちあふれている。玄関横では水が滝から流れ落ち、川のせせらぎのような音を立てる。水の流れの向こうにはホールがある。篠田桃紅さんの作品を展示している「岐阜現代美術館」。800点を超える所蔵から、年5回それぞれテーマを決めて無料公開している。本来、ここはコンサートホールとして設計されている建物で、地元の人には年に10回程度無料で楽しんでもらう。
ここは、鍋屋バイテック会社(岐阜県関市:金田光夫代表取締役社長)。ものづくり企業の工場だ。関市にある工場公園という意味から社内では、「関工園(せきこうえん)」と呼んでいる。エントランスを入ると、一番手前には社長のデスク。ここでは、社長が受付けをする。訪問客が必ず目に入る位置に社長がいて、最初に挨拶をするのが社長の仕事だ。
創業は実に永禄 3(1560)年。信長が桶狭間の戦いに勝利した年まで遡る。高度な知識と技術を活かし、鍋、釜、鐘など鋳物をつくってきた。今では、半導体製造装置、液晶パネル、プラズマパネル、太陽光発電パネルなどの製造装置に使われるハイテク部品を製造する。
会社のコンセプトは「寿司バー」だ。顧客が求めるものを、そのタイミングで必要なだけを提供する。一つ一つ丁寧に、手際よく腕をふるう寿司職人のようでありたいという思いは社員全員に浸透している。「多品種少量」「多品種微量」生産と「スピード」の2つを追求し、1個であっても注文を受ける。しかも当日14時までに受けた注文は当日のうちに出荷するという。
この「寿司バーコンセプト」を実現するため、750台ある加工機械のうち70%が自社開発によるものだという。市販の工作機械では、多種微量の製品を効率よく加工することが難しい(段取り変えに手間がかかる、作りすぎの無駄が起きやすいなどの問題がある)からだ。
セル生産方式、つまり、一人の作業者が複数の機械を担当して、素材から完成まで
1個流しでものづくりを行っている。社員一人ひとりが、品質と納期に責任をもつ仕組みだ。社内は笑顔と活気に溢れ、大きな声での挨拶は欠かさない。知識や技術の習得を通じて豊かな人間を目指す「ひとづくり」こそ大切と考える鍋屋バイテック会社。これからも成長を続けていくに違いない。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。
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