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2010年の記事

 

 

 

株式会社ニシエフ

■「ニーズを掘り起こし需要減をカバー」

業種:FRP船の建造
株式会社ニシエフ

強度に難があったプラスチックをより強くしようと考え出されたのがFRP(繊維強化プラスチック)だ。ガラス繊維やカーボン繊維、ケプラ繊維などを樹脂に混ぜることで強度はもちろん、耐熱性や耐候性、耐薬品性にも優れたプラスチックを作り上げた。自動車はもちろんのこと、航空・宇宙関係にも用いられるようになっている。用途によっては半永久的に使える材料といわれる。

こうした材料はエンドユーザーにとっては魅力的なものだが、メーカーにとってみると開発しながら自らの首を絞める材料にもなりかねない。株式会社ニシエフ(山口県下関市)はFRP船の建造では数多くの実績を持ち、大型漁船まで手掛けている。ところが漁船の建造需要が一巡してから受注が激減した。FRPの強度が向上した結果、鉄鋼船や木造船のように作り替える必要がなくなってしまったためだ。

当然のことながら、FRP製漁船メーカーも相次いで廃業や業種転換に追い込まれてしまった。船主に向けて質の高い漁船が提供できても、需要が激減した結果、造船会社として立ち行かなくなってしまったわけだ。ニシエフも需要の落ち込みに悪戦苦闘し、プレジャーボートやタンクなどFRPが利用できるものを考え、なりふり構わず受注した。その中でニッチマーケットである救命艇への参入は同社の新たな道を切り開くものとなった。

救命艇は通常、船舶の甲板上につるしておき、緊急時にロープで海上に降ろすことになるが、北海油田での爆発事故以来、緊急脱出用として迅速に対応が出来る自由落下式救命艇が注目された。同社では「FRP素材にうってつけ」(堀井淳社長)と判断し、自由落下が可能な救命艇の開発に乗り出した。形が出来ると何回も実験を繰り返した。強度や安全性などをチェックするため、自らも実験に加わり、現在のような形状になった。

折しも世界的に自由落下式救命艇搭載を義務づける動きが強まったため、同社にとって追い風となった。それまで、山陰の一ローカル企業だった同社が、一挙に「グローバル企業として名乗りを上げるチャンスが訪れた」(同)ことになる。「FRPは素材の特性を生かせば風力発電など様々な分野でニーズがある」(同)と考えられる。FRP製品だけではなく、いくら優れた製品であっても必ず需要に陰りが出る。その時、新たなニーズの掘り起こしができれば、需要の減少を克服し、爆発的に拡大する可能性を秘めている。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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