東京総研トップへ

元気な企業(最新)

 

 

 

(株)アイル

■「“八方よし”の野菜のりで、国内外に打って出る」

業種:野菜のりの製造
(株)アイル

検索エンジンで「野菜海苔(のり)」と入力すると、長崎県商工会連合会「地元農産物を活用した野菜のりの商品開発」−のページが 真っ先に出てくる。同ページに載っているのがアイル(長崎県平戸市、早田圭介社長)を中核とする野菜のり開発・産学官連携プロジェクトの概要だ。そのアイルは「野菜のりと出会ってから17年。ようやく納得のいく野菜のりが出来上がった。世界に誇れる事業だと確信している」(早田社長)と、長い滑走路を飛び立って、国内外の市場を一挙に掘り起こす時期を迎えた。

アイルは平成18年(2006年)に発足した。その8年前、野菜のりと出会い「鳥肌が立つほどの衝撃を受けた」という早田氏が、野菜のり事業化のめどを立てたのちに立ち上げた。野菜のりとは、野菜をペースト状にして乾燥させたシート食材で、板のりが黒一色なのに対し、ニンジン、ダイコン、キュウリ、カボチャ、紫キャベツなど原料の野菜により、赤、白、緑、茶、紫とカラフルに仕上がる。20年ほど前から商品化されてはいるが、食感が悪い(口どけせず、紙を食べている感じ)、退色してしまう、巻きにくいといった課題から市場拡大には至っていない。

雌伏17年。アイルでは、口どけして、食感が良く、1年間退色せずに、巻きやすい野菜のりの開発に成功した。今年になって、大手のりメーカーなどへの提供が始まり、いよいよ事業を本格展開する時期に差し掛かった。原料は野菜と寒天だけの“ヘルシー食材”をセールスポイントに、のりの代替、健康食品、菓子などの需要開拓を進めている。「たくさんのベジタリアンがいて、日本食の人気が根強い海外市場が、とくに有望」(同)と見て、関係各方面と折衝を重ねている。

欧米などでは、板のりは黒い色に抵抗感が持たれ敬遠されがちなのに対して、カラフルな野菜のりは、カリフォルニアロールなどにうってつけ。フランス人のシェフからは「創作フランス料理に使える」との声も寄せられているという。また、「野菜のりで、食べられる容器をつくれないか」などユニークな注文が持ち込まれ、すしロボットメーカーなどとの提携話も具体化しつつある。果たしてどんな新商品、新市場が現われるのか…。

早田社長は証券会社に勤め、新聞記者を経験し、父親の食品卸会社を継ぎ、バス会社を運営するなど、多彩なキャリアの持ち主。食品卸時代に、たまたま遭遇した野菜のりが、傷入りやサイズ違いなどの規格外野菜を有効活用でき、農家に優しく、食糧危機の解消にもつながることを知る。その時の「こんなに世の中に役立つものがあるのか」との衝撃に端を発するプロジェクトが今、実を結ぶ。「5年後は売り上げ25億円を目指す。将来的には1000億円も…」(同)とのビジョンが、少しも大風呂敷に感じられない。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。

 

▲ TOP

2015年の記事に戻る