(株)日精ピーアール
■「水なし印刷の導入で個性派経営」
業種:印刷業
(株)日精ピーアール
停滞感が漂う中小印刷業界。仕事量が減少し受注単価も抑えられ、経営実態はおしなべて厳しい。こんな中にあって右肩上がりの成長を続ける企業が実際にある。そこにはよそでは容易に見ることのできないアグレッシブな差別化戦略が進められている。
日精ピーアール(東京、中村慎一郎社長)がその企業。創業が昭和10年というから、今年で業歴は77年に及ぶ。年数からいえば押しも押されもしない老舗だが、次々と新しい風を取り入れていく柔軟な経営手法はまるでベンチャー企業。同社を特徴づけるのが「水なし印刷」とこれを基盤とする「高精細印刷」の2つの主力事業だ。
一般のオフセット印刷は大量の湿し水を使う「水あり印刷」だが、この湿し水には添加剤などが含まれ、大気汚染の原因となる物質を発生させるといわれる。「水なし印刷」は有害物質を含んだ廃液を大幅に削減できるため、環境保全に直結する。しかも水を使わないため、印刷物を構成する目に見えない微細なドットがにじまず、くっきりと印刷できる。
「10年前なら特徴がなくても仕事はあった。時流の変化とともに独自の特徴の必要性を強く感じた」と中村社長は言う。水なし印刷の導入を機に「環境」というキーワードを経営の軸に据えた。印刷物には環境に配慮したものであることを示す認証マークを付けることができ、発注元にとっては製品の付加価値になる。またグリーン電力の購入、「森林認証紙」、大豆油インキなど環境配慮の材料も取り入れた。
平成21年にはアート分野にも参入。原画をスキャナーで読み取り専用のインクジェットプリンターで印刷する「ジグレー版画」を導入、絵画をプリントしたポスターやカレンダーも手掛けるようになる。企画から納品まで一括で請け負うワンストップサービスに「環境」「アート」を組み合わせ、独自の個性が浸透していった。
売り上げのみを目指せば過当競争から損にもつながりかねないため、目標値を売り上げから粗利益に転換、さらに部制を廃止し、2〜5人で構成するユニット制を導入、少人数で全員が活躍できる環境を整えた。「単なる実力主義でなく、その人の良さを生かす適材適所を目指す」という。中小企業の家族的な良さを大切にしながら常に新しいことに挑む。日精ピーアールの発展のカギはこの辺にありそうだ。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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