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(有)オフィス結アジア

■「声を失った人を助け、ビジネスにも向くツールで第2創業」

業種:コミュニケーションアプリの開発
(有)オフィス結アジア

難病の患者や障がい者のための薬や器具類は、市場規模が限られることなどから、真にフィットするものがなかなか現われにくい面がある。そんな中、オフィス結(ゆい)アジア(神奈川県藤沢市、高橋宜盟社長)が開発したコミュニケーションアプリ「指伝話(ゆびでんわ)」は、異色の多目的ツールで、「障がい者専用でも、ビジネスに特化したものでもない。どう使うかはその人次第。そんな余白を残している」(高橋社長)という余白部分に、魅力がぎっしり詰まっている。

同社はソフト開発会社に勤めていた高橋社長が、平成9年に独立、創業した。創業時はインターネットが本格的に普及し始めた頃で、第3次SOHO(個人・小規模事業所)ブームとも言われた。そうした時代背景を捉えて、SOHOの事業化支援を主力業務として、実績と経験を積み重ねてきた。時を経て、平成24年、初の自社ブランド製品「指伝話」を世に出し第2創業を果たす。

「満員電車の中で、声を出さず携帯電話に応える方法はないものか…。そう考えたのが始まり」。高橋社長は指伝話誕生のルーツをそう説明する。“声を出せない状況”での通話を可能にするものなら、“声を出せない人”が使える電話にもなる。たまたま、咽頭がんで声を失った人と出会ったことがきっかけとなり、のどの病気や失語症、失声症などを患った人たちの会話補助、リハビリ支援などの有用ツールへと発展させた。

指伝話はあらかじめ登録した文章を、ユーザーが指で選択することで、音声化するシステム。スマートフォンやタブレット端末向けのアプリとして提供し、音声合成ソフトと組み合わせる。昨今、指伝話と同じような機能を持つシステムが少なからず商品化されている。それら類似・競合品との差別化のポイントは「ユーザーインタフェースが違う」(高橋社長)。優れたユーザーインタフェースを作り上げるため、重度の障がい者をスタッフに加えたり、フィンランドの失語症対策プロジェクトに参加したりと、“ユーザー目線”からの開発を徹底しているところだ。

研究発表や会議のプレゼン練習、海外旅行での指差し英会話、ニュースサイトなどの読み上げ、コンサートのMC(司会進行)…。指伝話にはさまざまな使い道があり、ユーザーが新たな利用シーンを見つけてくれる側面もある。それだけマーケットの広がりが期待でき、「障がいを持つ方々は、障がい者専用よりも汎用のツールを好む」(同)といった傾向も指伝話の事業展開を後押ししよう。同社では、指伝話を『30cmの物差し』に例えている。その心は、「長さを測り、線を引くほか、布団を叩いても、背中をかいてもいいんです」。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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