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尾西食品(株)

■「おいしさにこだわる」

業種:非常食アルファ米製造
尾西食品(株)


これまで非常食といえば「乾パン」が通り相場。ところが平成7年の阪神・淡路大震災をきっかけに「アルファ米」が注目され始めた。何しろ種類が豊富なことと味の良さが受け、乾パンから切り替えて備蓄する企業や自治体が増えているという。

非常食アルファ米は一度炊いた米を乾燥させた食品。パッケージに熱湯を注げば15〜20分で、摂氏15度の水でも60分で食べられる。常温で保存でき保証期間は5年間。宇宙航空研究開発機構(JAXA)から「宇宙日本食」の認証も受けた。これを手がける尾西食品(株)(東京)は今、東日本大震災でさらに需要が増え、被災者にも「おいしかった」と感謝されているという。

尾西洋次社長は「とにかくおいしいんです」と味に絶対的な自信とこだわりを持つ。元々は同社長の父親が昭和7年に製法を確立し海軍に納入していた軍用食糧だ。会社はその3年後の昭和10年に設立、戦後は非常食として販売した。米は地域一等米を使用、和風、洋風、おかゆなど12種類の味を用意している。

これは避難所などで食べる場合は同じ味では飽きてしまうためで、登山食や海外旅行に持って行くというファンも多いという。今回の東日本大震災では主力工場の宮城工場(大崎市)が被災し「初めて被災者の立場になった」(同)。同社も昨年3月末に地方自治体や企業に納入予定だった約80万食を被災地に提供した。

幸い、主力工場は電気が別系統で来ていたことや揺れが小さい地盤だったという幸運が重なり被害は軽微で、すぐ生産を再開できた。工場職員とその家族は被災しながらも生産とアルファ米の配布に追われ、震災から1カ月以上、同社のアルファ米を食べて乗り切ったという。

順風満帆なように見えるが実は10年ほど前には経営危機に陥り、その後外部から役員を招き入れ再建を遂げた経緯がある。その時この会社に協力しようと周りに思わせたものは「味」だった。五目ごはん、白飯、わかめご飯…。本当の「おいしさ」が非常食大手への道を切り拓いた。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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