オー・エス・ピー
■研究者が環境ビジネス経営者に転身
業種:環境ビジネス
オー・エス・ピー
研究者が会社を興すとき、販売・財務・総務といった販売・管理部門に自分の片腕となるようなブレーンがいるというのが経営の基本形。起業者によっては研究開発に傾斜するあまり往々にして、資金繰り、販売・マーケティングなどの面で行き詰まり、経営が軌道に乗る前に挫折するケースがあるからだ。「自分は長く研究所の中におり当初、ビジネスはわからなかった」というオー・エス・ピー(埼玉県狭山市)の山本弘信社長は、一般に言われるこんなリスクを乗り越えベンチャー経営者に見事に転身した。
将来の有望分野で事業を進める外資企業に身を置いていたことも山本社長に有利にはたらいた。ドイツの総合化学会社である旧ヘキスト社(現セラニーズ)グループで研究者として働いていたがその間に、あることを決断した。同社の持つ有機物質センサーの技術ノウハウを活用し、その製品化を目指して起業しよう、と。
揮発性有機物質(VOC)対策は欧州が日本に先んじて社会問題化していただけに、日本でも将来有望なビジネスになる、と肌で感じての決意だった。さっそく同技術でライセンス契約を結び、会社を設立した。1998年のことだ。この判断が的確だったことはほどなく証明される。その後、日本はVOC排出規制の強化に動き始め同社に追い風が吹く。
さて、旧ヘキスト社の技術ノウハウとは、VOCを吸収・放出する高分子薄膜素子と、干渉増幅反射法を応用した光学式センシング技術を融合した技術。オー・エス・ピーは幾多の努力の末に製品化に成功した。主力のVOC測定器に加え、独自の技術で油種判別センサーも開発。この判別センサーは光ファイバーを組み込み、ガソリン、軽油、灯油などの油種を瞬時に判別する装置だ。今後、有機物質センサーの研究開発型ベンチャーとして、知的財産権を柱とした企業に飛躍する期待を抱かせる。
山本社長の非凡なところは、研究者として優秀なことはもちろんだが、会社の弱い部分については信頼できる外部機関の助けを躊躇なく借りるという「外向き」志向である点。技術と将来性という潜在力はあったものの、前途多難な船出を支えてくれたのは金融機関のベンチャー育成基金、中小企業基盤整備機構、埼玉県などの助成制度とアドバイスだった。同社長は今なお「関係機関の助成、アドバイスに救われた」と草創期を振り返り、感謝する。研究者には稀有な経営マネジメントとしてのバランス感覚を備えていたことが、起業を成功に導いた要因と言えようか。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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