パン・アキモト
■「まるで焼き立てのパンの缶詰」
業種:パン保存食製造
パン・アキモト
コメとほぼ同レベルの需要があるパン。昼時になると、手作りのパン屋さんでは買い求めるお客でごった返す風景がごく普通になった。売りの文句は「焼き立て」。では発想を少し変えて、焼き立てのパンを長期保存できないか。これが可能な「パンの缶詰」のようなものがあったらいろいろと便利で役に立つのではないか…。
これを実現させたのが、パン・アキモト(栃木県那須塩原市、秋元義彦社長)パンの柔らかさや香りを維持したまま、最大3年間保存できるパンの缶詰を製造・販売する。東日本大震災以降、非常時向けの備蓄食などとして引き合いが増えている。缶のラベルは自由にデザインできるため企業のノベルティにも活用されている。
開発のきっかけは阪神淡路大震災。震災直後、秋元社長は2000個以上のパンを被災地に送ったが、長持ちしないため3分の2が廃棄された。それからは通常業務終了後、長期保存が可能なパンの研究を始めた。乾パンは水分を取り除くことでカビや腐敗を防ぐ。パンの風味を残したまま保存食にするにはまず、冷凍ではなく常温で保存できることが必要。
ある時タケノコを缶詰に詰める工場を見て、「パンにも応用できる」と考えた。長期保存するにはパン、缶ともに無菌状態にする必要がある。缶の中に焼いたパンを入れ、缶を熱殺菌してみた。だが2度加熱するとパンの風味は落ちた。次に缶にパンの生地を入れた直後に加熱すると、生地の水分で缶の中が結露したり缶に付着した。
そこで思いついたのが吸水性と耐熱性に優れた特殊な紙で生地をくるみ、缶に入れる方法。これが大成功し、パンの缶詰の売り上げは同社売上高の約8割にも。しかし3年間の期限が過ぎれば廃棄されてしまうことを悔しがった秋元社長は、自治体などから2年間を経過した缶詰を下取りし、世界の飢餓で苦しむ人々へ義援物資として供給するプロジェクトもスタート。柔軟な発想で商品を生み出したパン・アキモトはこうして、ソーシャルビジネスの一翼も担う。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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