東京総研トップへ

元気な企業(最新)

 

 

 

菓子舗サイトウ

■「くじけない復興魂、菓子づくりに情熱」

業種:菓子の製造販売
菓子舗サイトウ

国内屈指の漁港、宮城県気仙沼市は東日本大震災で甚大な被害を受け、現在でも市民の8人に1人に当たる約9000人が仮住まい。そんな気仙沼で、おみやげ品として人気のお菓子を開発し、復興の一役を担いたいと願っているのが、「菓子舗サイトウ」店主の齋藤宏さんだ。震災前には同市内に洋菓子中心の3店舗を運営。とくに震災の前年11月には本店をリニューアル。「少しでも街に活気を」という思いから、新店舗はスーパーマーケットを併設したほか、子供連れの顧客開拓のため、子供広場も開設した。だが、津波はすべてを呑み込んだ。あまりの打撃に、「廃業も考えた」という。

だが、同業の仲間が機材を提供してくれたり、原料供給の申し出もあったりなど周りの人に支えられ、約1カ月後には菓子づくりを再開。仮店舗で営業を始めたほか、その年の11月完成した気仙沼港近くの仮設商店街「紫市場」にも出店した。現在は2カ所の仮工場と2店舗を運営している。齋藤さんによると、「平成24年ごろは観光客もたくさん訪れ売り上げも良かったが、その翌年あたりからは観光客の減少とともに減ってきている。」。

それでも、市の復興推進委員も務める齋藤さんはひるまない。現在は2カ所で菓子を製造し非効率のため、入札中の三陸道に近い市内の前浜地区の土地を取得し、そこに国のグループ補助金を活用して今年度内に新工場を建てる計画。ここには喫茶スペースをつくるほか、山羊を飼って子供たちに飼育してもらい、その乳でアイスクリームやプリンをつくって提供するなどの集客策を練っている。市が計画中の本設商店街にも出店を申請するなど、事業拡大への意欲は高い。

新商品開発にも熱心だ。観光客に人気のおみやげ品を生み出し、少しでも地域活性化に役に立ちたいとの思いだ。現に、地元のゆるキャラを活用して震災前に開発した「ホヤぼーやサブレー」は市内7軒の菓子店が販売しており、「現在までに90万個売れた」という人気商品。このほかにも、「さんまパイ」「いかせんべい」「海鮮マカロン」、薬膳菓子「ごんぼたれ」など、気仙沼の海産物などを生かした新商品を次々と生み出している。

昭和40年に先代がせんべいの受託製造から始めたという菓子舗は、今年でちょうど50年の歴史を経た。齋藤さんは洋菓子・和菓子製造を5年間学んで後を継いだ。「お菓子はつくっているうちに、どんどん面白みが出てくる。夜遅くまで1人で新商品を試作している。」という。次の50年と復興に向けた情熱は衰えない。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。

 

▲ TOP

2015年の記事に戻る