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2012年の記事

 

 

 

櫻井技研工業(株)

■「永久磁石使いメンテナンス」

業種:資材運搬モノレール、昇降機などの製造販売
櫻井技研工業(株)


昭和48年の第一次石油ショックの少し前、大手特殊鋼メーカーで生産技術や営業に携わっていた櫻井技研工業(株)(愛知県春日井市)の櫻井靖久社長は、先の当てもなく会社を辞めた。その後、事業をはじめるため電力会社を中心に仕事探しに奔走して、2、3年が過ぎた。

ある時、電力会社の鉄塔を作る会社に飛び込みで訪れ、やっとのことでネジ製作を請け負う仕事を見つける。背中にはサラリーマン時代に付き合った鉄鋼関連メーカーが控え、快くバックアップしてくれた。その後、昭和58年に会社を設立して以来、電力会社などとの共同開発、独自開発による製品を次々と世に送り出す。資材運搬モノレール、昇降機や単体重量30トンの荷物を傾斜角40度ぐらいの斜面を上げ下げするインクラインなどだ。風力発電タワーなどのメンテナンス装置もこれに加わる。

だが東日本大震災・福島第一原発事故で転機が訪れる。電力会社が設備投資を控え、その影響が同社にも押し寄せた。弱気になり始めた同社長はその時、「風力発電などのメンテナンスに永久磁石を使えないか」と、温めていたアイデアを思い浮かべた。それまでは風車タワーの外周に金属帯を巻き付けてラックレールを固定、各レールに取り付けた昇降機に乗った作業員が上に向けて順次金属帯を巻き付けながらレールを継ぎ足していく方法。

これをコストがかさむ金属帯ではなく永久磁石を使う。下駄のように磁石を張り付けてラックレールを継ぎ増ししながら上に行き、逆に作業が終われば磁石を外しながら下りる。永久磁石は引っ張り試験で530キログラム、せん断で340キログラムという、とてつもない強度が公的工業試験所で証明されているという。

これを可能にするには、いったん鉄板に付着すれば剥がすのが困難という課題をどうクリアするかという問題がある。社長は試行錯誤の末、永久磁石の安全で簡単な取り外し方法を考案、特許も取得した。この結果、作業人数、工数などコストが大幅に削減、今大きな反響を呼んでいる。しかも用途も広い。再生可能エネルギー推進の流れの中、櫻井技研工業(株)の飛躍が期待される。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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