サイエンス(株)
■「世の中のためになる!」
業種:ヒートポンプとろ過装置のメーカー
サイエンス(株)
世の中のためになる製品やサービスを提供することは、企業の存在意義に関わる基本中の基本。何をいまさら、と言われるかも知れないが、案外忘れがちになる命題でもある。この企業の社会的使命を存立の基盤に置き、ピンチの時もこの使命を果たそうと一心に取り組んで会社を立て直し、今では産業界から高い評価を受けている企業がある。
「世の中のためになる製品を開発し、貢献したい」、「使い勝手の良いサービスを提供したい」との強い信念で、住宅向けの電気設備工事を担当していた大手電機メーカーを退社して独立、電気設備会社を設立したのが桑原克己氏。その会社で仕事をするうちに水道の配管や貯水槽の汚れに直面し、「水を通じて世の中の役に立ちたい」と一念発起して、新たにサイエンス(株)(さいたま市)を設立した。
新会社で、循環ろ過装置を内蔵した24時間風呂を家庭向けに開発、大ヒットした。しかし皮肉にも他社製の24時間風呂でレジオネラ菌による死亡事故が発生し、その影響を被って売り上げは急速に落ちた。このため、ろ過装置事業は業務用に特化し、新たに打ち出したのが、それまで蓄積した電気関連技術を生かした「ヒートポンプ」の開発。これがピンチを乗り切る大胆な方針転換につながる。
桑原社長は「開発はもちろん大変だったが、本当に大変だったのは市場で役に立つ製品として認められるか、そしてそれまでいかに我慢強く粘れるか、ここが勝負所だった」という。自分の資産を持ち出すなど研究開発費に毎年1億円の投資を続けた。この継続の源となったのは「世の中のためになる製品を開発し社会貢献したい」という揺るぎない信念だ。
製品化に3年、ブラッシュアップした製品で納入実績を作り、製品が本当に認められるまで15年近くを費やした。経営は大胆な決断の連続だったが、企業の社会使命を全うするという信念は微動だにしなかった。中小・ベンチャー企業に必要なのは「市場を創出する力と何事も諦めない粘り強さ、そして運」と桑原社長は言う。社会貢献という企業の使命を真に実践する中小企業の一つと言える。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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