瀬尾株式会社
■地域資源を差別化の切り札に
業種:備後絣・アパレルメーカー
瀬尾株式会社
消費者ニーズの多様化、衣料品支出の低下とそれによる市場の縮小、大手メーカーのSPA(製造小売業)、安価な外国製品の流入、日本の繊維業界の空洞化など中小アパレルメーカーを取り巻く経営環境は大変厳しい。このような状況下、中小アパレルメーカーには何が求められているかをライフスタイルから探り適切な商品を提案する仕組みづくりが求められている。
広島県福山市新市町は日本三大絣(かすり)の一つである「備後絣」の産地である。昭和35年頃、一織り毎に多くの利益が上がったことから、織機の“ガチャ”という音と1万円札を組み合わせて“ガチャ万”という言葉をよく耳にしたという。当地には現在もこの備後絣を受け継いだ繊維産業が多い。
昭和41年に創業した瀬尾株式会社も備後絣の流れを汲む中小企業である。現在は従業員10名の精鋭部隊が、子供服の「PARTY
TICKET」、大人服の「UTAGE」という絣とは離れた2つの自社ブランドを展開し、東京・自由が丘にある直営店をはじめ全国のアパレルショップに年間7万点もの商品を製造販売している。この瀬尾株式会社が、備後絣をシャルムにした新ブランドを発表し、今アパレル業界から注目を浴びている。
このきっかけについて瀬尾剛正社長は「他の産地でも生産可能な生地を用いたデザインにすれば模倣は容易だが、熟練工でしか生産できない備後絣という地域資源を用いれば絶対に模倣されない。」と語る。さらに福山あしな商工会の平野陽経営指導員は「中小企業にとって商品開発は経営に莫大な負担を強い模倣対策は切実な問題。備後絣の新しい用途開発は絣の再興だけでなく新市町にある繊維産業全体の活性化に繋がる」と語り、平成17年に福山市の「地域振興活性化事業」、同18・19年は中小企業庁の「JAPANブランド事業」、「地域資源∞全国展開プロジェクト」といった支援施策を活用し消費者のライフスタイルを分析した。
市場調査を進める中で、子供にもママと同じナチュラルテーストのファッションを共有させたいというニーズを感じ取る。自然素材である“かすり”の優しさをさりげなくアピールしたいという願いを込めて「Lisca(リスカ)」ブランドを立ち上げた。11月に実施した東京・青山での新作発表会には、BEAMS、SHIPS、CHIGOといった人気セレクトショップのバイヤー、著名なスタイリスト、有名女優までもが訪問し、場内は早くも春夏ファッションを期待する声が寄せられるほどの大盛況であった。
この成功は偶然ではない。平野指導員は瀬尾株式会社の経営革新計画の策定を通じてビジネスチャンスを感じていた。現在、「活かそう!地域資源」のキャッチフレーズの下、地域資源活用チャンネルには様々な施策・制度が紹介されている。中小企業が商工会と連携し、伝統産業という古くて新しい地域資源から新規性・独自性という市場の可能性を掘り起こし、売れる商品にまで昇華した成功事例の一つといえよう。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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