新越金網株式会社
■産業集積という「地の利」を生かす
業種:業務用厨房金網製品製造
新越金網株式会社
企業経営には「地の利」という言葉がある。消費地や納入先に近いのも地の利であり、同業者が多く集まっていることも地の利になるケースが多い。新潟県燕市は金属洋食器で一大地場産業を形成しており金属洋食器のシェアは90%にも達している。隣接の三条市も刃物の町だが、両市ともナイフやフォークなどテーブルウェアだけではない。家庭用、業務用金属製品から産業用金属部品までさまざまなものが作られ、研磨やメッキなど関連する産業も集積している。
新越金網株式会社(新潟県燕市)は1963年にこの燕市で創業、4年後には業務用厨房金網製品を手掛けた。金属洋食器などテーブルウェアのメーカーは燕周辺に数多く立地しているが、厨房用金網製品のメーカーはそれほど多くなかった。当時の厨房用品は竹を編んだかごやザルが多く使われていたため、耐久性のある金属製のザルなどには必ず需要があると考えた。
麺類の湯切り用振りザルや水切りザルなどだけでなく、家庭で用いるさまざまなザルやネットなど金属製の網製品を生産、その種類も今では1000点を上回っている。当然のことながら、自社だけでこれだけの製品を生産するのは困難だ。同社にとって強い味方になっているのは周辺にある金属加工のメーカーだ。これらに協力を仰ぎ、ユーザーのニーズにあった製品を作り出している。協力工場は燕や三条は金属加工のメッカに立地しているだけに、希望通りの製品に仕上げてくれるという。
今では協力工場も30社に達しており「自社では難しい加工技術でも協力工場に相談すれば大半が解決する」(山後春信社長)と感謝を忘れない。また同じ金属加工ということから、気軽に相談も出来る。同社はグループにアウトドア用品の総合メーカーも持っているが、アウトドア用の金属部品はすべて協力工場に頼っているほどだ。地の利を最大限に生かしていることになる。
利益を上げなければ協力工場からそっぽを向かれる可能性があるが、同社の製品バランスは好不況に影響を受けにくい。好況時はホテルや外食産業が活況になり、業務用厨房製品の需要が増える。不況になると外食を手控え家庭での食事が多くなる。またホテルに泊まらずキャンプなどが増えるため、アウトドア用品のニーズが拡大する。業務用と家庭用のバランスが取れ、売上アップにつながるため協力工場にも還元できる。協力工場が潤えば「燕の街も活性化する」(同)。燕あっての新越金網といえる。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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