スリープウェル(株)
■「簡易脳波計を開発し、未開の『睡眠領域』に挑む」
業種:医療機器小型脳波計開発
スリープウェル(株)
人は一生の3分の1もの時間を睡眠に費やす。睡眠はそれだけ“重み”があるにもかかわらず、まだまだ謎だらけ。例えば、時間帯ひとつとっても、早寝早起きが健康に良いとの定説に対し、早起きすると心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まり、寿命が縮まるとの新説が出て波紋を広げている。そんな「睡眠領域」をブルーオーシャン(競争のない未開拓市場)と捉え、関連ビジネスを立ち上げたのがスリープウェル(大阪市、吉田政樹社長)だ。簡易脳波計による“睡眠の質”の可視化を売り物に、「睡眠科学をてのひらに」のキャッチフレーズのもと、青い海の大航海に乗り出した。
同社は平成22年(2010年)に、公益財団法人の大阪バイオサイエンス研究所が開発した脳波測定技術の産業化を目指し発足した。マウスを対象に研究を深め成果を上げた技術であり、人への応用により、睡眠医療を変える可能性もあると期待が集まった。平成19年(07年)から産学連携コーディネーターとして活躍し、同研究所と接点ができ、研究所に出向していた吉田氏が、同技術にほれ込んで社長に就任、今日に至る。
同社製の脳波計「スリープスコープ」は、本格的な睡眠検査となる終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)が、センサーや電極を全身に取り付けるのに対し、額と耳裏の2点に電極を付けるだけで、PSGと、ほぼ同等の測定結果を得られるようにしたもの。これにより、睡眠時の脳波検査が容易になり、睡眠障害の是正・改善につながる。吉田社長は「これまで寝つきが悪い、眠りが浅いなど定性的にしか表せず、客観性に乏しかった睡眠の質を、客観的な指標で定量的に捉えられるようになる」とその意義を説く。
脳波計が医療機器であることから、同社では現在、病院などとの連携のもと、簡易脳波計および脳波解析の普及を進めている。「睡眠薬やサプリメントの効果想定などで、製薬・食品会社や各種研究機関もスリープスコープを使っている」(吉田社長)。また、この12月1日に、労働安全衛生法の一部改正に伴い施行される「ストレスチェックの義務化」をビジネスチャンスと捉え、ストレスチェックと脳波に関する新事業、新サービスも検討中だ。
来年には米国で当地の大学と共に「うつ病と脳波」の研究を始める。うつ病は米国人に罹患者が多く、その数1800万とも2000万人ともいわれる。日本は100万人超(厚労省調べ)、全世界では3億5000万人(世界保健機関=WHO調べ)にものぼる。吉田社長は「うつ病者の睡眠時の脳波は明らかに健常者と異なる。精神医療先進国の米国で臨床試験を実施し、世界基準策定を目指す」と米国での研究の狙いを説明する。謎だらけの睡眠の一端を解明し、うつ病など精神疾患の治療への道筋をつけたら、青い海の大航海は新大陸にたどり着く。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。
▲ TOP
2015年の記事に戻る