(株)下請の底力
■「困った」を解決したい
業種:顧客の問題解決など新事業の創造
(株)下請の底力
下請企業が、本業とは少し離れた位置に身を置き、新たなビジネスづくりを目指すとともに、社会に役立つ活動をする。群馬県桐生市でそんな動きがある。リーマンショック後、収益悪化に苦しむ下請中小企業の経営者など6名が集まって平成21年
8月に設立した。その名も「(株)下請の底力」(登内義也代表取締役。通称『シタゾコ』)である。「顧客の『困った』を集めて、それを解決することによって、新たな仕事を作る」これが活動の基本コンセプトだ。
シタゾコは、桐生市・太田市を中心とした中小企業経営者が集まって組織す
る「両毛ものづくりネットワーク」の活動から産まれた。このネットワークは、共同受注、勉強会などを異業種で連携して行い、相互にレベルアップを目指したが、リーマンショックにより、ネットワーク活動どころか、本業が経営危機に陥るメンバーが相次いだ。「この状況下で何をすべきか」、模索する中で、営業研修の講師をしてくれた登内氏とメンバー数人が共同で、立ち上げた。
まずは得意のものづくり技術で、農機具のメンテナンスを専門で行うビジネス展開を目指した。だが、農家を回って徹底的にヒアリングをしたところ、農家が本当に困っているのは、猪などの鳥獣被害や耕作放棄地の拡大などの社会問題そのものだった。まずは、猪撃退用の蚊取り線香「イノダー」を開発した。就農予備校に通って、徹底的に農業問題の勉強を始めたメンバーもいる。農業現場の生の声を聞けるネットワークも確実に広がりつつある。
昨年末、玄そばが不足しているという「困った」を聞くと、全国に電話して、供給元を探した。メンバーの一人は、生まれ年の5円玉をピカピカに磨き、一般消費者に販売した。消費者と直接触れ合うことの少ない下請企業から脱皮し、消費者ニーズを自ら吸い上げ、仕事を作っていくという活動である。「直接喜びの声が届いた時は、本当に感激した。」下請だけでは得にくい気持ちである。
今までは下請で、どうしても顧客からの情報を得にくい面もあった。「これからは直接顧客ニーズを吸い上げ、自ら仕事を作る動きを進めていきたい」と登内代表。この動きが軌道に乗れば、同社がスローガンとして掲げる「下請企業復活の手本となる」も現実味を帯びてくる。「もっともっと元気な社会にしたい」「下請企業から世の中を変えたい」という熱い想いはスタートしたばかり。今後の『底力』に期待したい。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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