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2011年の記事

 

 

 

SONOBE STEELPAN

■「カリブの楽器に魂をこめて」

業種:ドラム缶からつくられる楽器スチールパン製造
SONOBE STEELPAN

カリブ海の南部に浮かぶ島国トリニダード・ドバゴ。ドラム缶からつくられる楽器スチールパンは、この国が発祥だ。見た目とは違い、包み込むような柔らかな音色で、同じ金属製のシンバルの音とは全く異なる。SONOBE STEELPAN(東京都大田区:園部良代表)の園部さんは、この楽器とともに人生を歩んできた。きっかけは、大学生の時、友人宅で輸入レコードから流れてきた音。この独特の響きに驚き、魅せられた。

平成2年、とにかく行きたい一心でトリニダード・ドバゴに渡航した。しかし、何のあてもなく、文化に触れた程度で帰国。「やはり作ってみたい」と2年後にもう一度、渡航を果たした。今度は、掘っ立て小屋のようなスチールパンの製造現場に行って、日中ほとんど何も食べず、じっと光景を眺めていた。左手にスティック、右手にハンマーを持って慎重に音を合わせている職人の姿を目に焼き付けた。

帰国して、見よう見まねでやってみる。しかし、全く思った音が出ない。何度やっても駄目で、仕方なく、製造ではなくスチールパンの輸入業を始めた。注文は少しずつ受けていたが、平成6年のある日、埼玉県の高校から電話があり、「700万円の予算で、できる限りたくさん買って欲しい」と。このような大口の注文は受けたことがなく、戸惑いながらも現地と必死に調整して、23セットを納入した。

ところが、2週間後、納入した高校から電話がかかってきて「3割が不良品」と苦情を受けた。愕然とするが、これがきっかけになり、スチールパンの製造・調律一筋30年のベテランを現地から呼ぶことができた。見事な手さばきで、全てを修理してくれた。彼が帰国する際、「俺から学ばないか」と言う。教えると言う現地人に初めて出会い驚いたが、これに懸けようと必死に学んだ。

スチールパンでは、一つの音の中に、わずかに別の音が入る「倍音」を出す技術が非常に難しい。最初は全く聞こえない。しかし何十回、何百回と叩いていると、聞こえてくる瞬間があった。来る日も来る日もハンマーで叩き続け、平成10年、ついに自作のスチールパンの販売を始めることができた。以来、今に至るまで製造や調律のオーダーが途切れたことはないという。1台製作するには4〜5日かかり、長い時は一年待ちになる。大田区の工匠100人にも選ばれている園部さん。一台々々、一音々々に命を吹き込む姿がある。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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