(有)角野製作所
■技術とアイデアで挑戦し続ける経営者
業種:難削材加工、小水力発電装置の開発・販売
(有)角野製作所
日本のモノづくりを支えるといわれる中小企業だが、独自技術を持っていても常に技術革新や新分野へのチャレンジを続けなければ生き残るのは難しい。そんな事例を目の当たりにした。岐阜県恵那市で難削材加工を手掛ける角野(すみの)製作所だ。同社は鉄製の自動車部品メーカーとして、昭和45(1970)年に創業。2代目社長の角野秀哉氏が入社し、自動機械を導入するなど設備改革を進めたが、競争相手が多いために価格競争に陥り、さらには円高で取引先のアジア生産が増えていった。
事業縮小が危ぶまれる中、ディーゼルエンジン用部品としてチタンやニッケル合金など耐熱性に優れるが、切削が難しい材料加工の引き合いを受ける。「誰もが嫌がる仕事」(角野社長)だったが、これに挑戦した。「刃物が2時間しかもたない」など加工条件の最適化などに大変苦労したが、何とかこれをクリア。欧州の自動車大手への納入も決まり、平成9年には量産工場を増築。24時間無人運転も開始し、世界シェア約3割を確保するに至った。それでも、コストダウン要請が厳しくなる。
そこで、最先端のMC(マシニングセンター)工作機械を導入し、5軸加工まで可能となった加工技術を生かそうと、平成14年には航空機・ロケット用部品に進出し、実績を積んだ。挑戦はこれにとどまらず、平成21年には小水力発電事業に参入した。「地球温暖化で、子供の時代にはどうなるか」と不安を感じていたためだ。発電機は3〜10ワットと小型だが、螺旋状の羽根は教育用としての用途も考え、ペットボトルのキャップを再利用した。これまでに約250台を販売したほか、ミャンマーの無電化村にも設置する計画だ。
そして今、角野社長の4回目の挑戦が始まった。加工技術を生かし、医療機器分野への参入を決めたのだ。地元の県立病院と医療器具を開発したが、「規制が厳しく、航空機向け以上の品質が求められる」分野。現在は専門家から指導を受け、「安全、安心の考え方を勉強中」だが、挑戦するからには認可を受けて4本目の経営の柱とする考え。
独自技術も、それを磨き続けなければ陳腐化したり、他社の追随を許したりすることになりかねない。時代の要請に合わせて新分野に挑戦し続ける角野社長に、日本の中小企業の真髄をみた思いがした。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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