(株)諏訪田製作所
■「超高級爪切りに活路を見いだす」
業種:高給つめ切り製造
(株)諏訪田製作所
100円ショップや、ノベルティーとして広く出回っているものの一つに爪切りが挙げられる。その爪切りの超高級品で確固たる地位を築いた企業がある。刃物で知られる燕三条の(株)諏訪田製作所(新潟県三条市)で、一個5,000円から15,000円の爪切りを製造。今年になって過去最高の月産個数を記録している。
「切れ味」が違う。小林知行社長は自社製品の値打ちを「切れ味」の一言で言い表す。他とは違った切れ味を創り出すのは「10年経ってようやく戦力になる」(小林社長)という鍛え抜かれた職人たちの技だ。「NC(数値制御)による機械加工ではせいぜい15ミクロン程度しか精度が出ない。しかし、当社のベテランは触感で5ミクロンの違いまで分かる」(同)。機械は人のトレースはできても、人を超えることはない。小林社長は刃物づくりにおける人と機械の力関係を、そう捉えている。
同社の前身は大正15年に創設され、当初、針金などを切る喰い切りと呼ばれる工具を製造した。以来、「はさんで切る道具」を一貫して手掛けてきた。爪切りのほか盆栽用の鋏や栗の皮むきなどを製造してきている。爪切りに関しては、かつて燕三条では多くの企業が製造していたが、一社また一社と撤退し、同社だけが残った。小林社長が伝統の技を生かした超高級品へと大きく舵を切ったのが奏功した。「継続は力なり」と、時代の変遷、世のニーズの変化への対応がきっちりとかみ合った格好だ。
同社では輸出にも力を入れている。ただ、海外市場の様相は国内とは大きく異なる。実は爪切りを使うのは日本のほか、韓国、台湾や中国の一部に限られ、他の国では爪をやすりで削ったりして爪切りはほとんど使わないというのだ。代わりに欧米諸国では甘皮処理のキューティクルニッパーが広く用いられ、その市場規模は爪切りよりはるかに大きい。郷に入れば郷に従え。「世界各国の文化や習慣は簡単には変わらない」(小林社長)と見て、当面、キューティクルニッパーを主力製品として海外市場を開拓する意向だ。
三条市郊外。諏訪田製作所の工場とオフィスは外観も内装も黒で統一され独特の雰囲気を醸し出す。オープンファクトリーを標榜し、熟練職人の作業風景を誰でも予約なしに自由に見学できるようにしている。ありふれた日用品を究極の高みまで引き上げた匠の技が、今の時代でも光り輝いている。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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