大洋化学(株)
■ものづくりはたった一粒のボタンから始まった
業種:合成樹脂成型品の製造・販売
大洋化学(株)
昭和29年、合成樹脂成型品の製造・販売の大洋化学(株)(和歌山県御坊市)は同じ県内の紳士服用ボタン製造企業から独立した。樹脂ボタンの開発メンバーと一緒での独立だったため、比較的スムーズに事業を立ち上げた。
人工真珠の樹脂原玉の生産も始まった。それまでのガラス製は割れる上に重かったのだ。しかし、生産の話を持ちかけた商店がガラス玉業者の激しい抵抗もあり、倒産してしまった。つまり、商品はあれど、売り先がない状態になってしまったのだ。一から営業を始め、扱ってくれるところを這うようにして探し、市場を作り上げた。後に樹脂原玉の生産の様子は地元和歌山出身の有吉佐和子が長編小説「日高川」に取り上ている。
高度経済成長にも乗り、大量注文が来た時代もあった。会社の体制が整わず、全社員で生産に乗り出すような状態に。それでも、船積みに間に合わず注文個数と同じになるよう空箱を送り、不足分を箱に積んで和歌山から横浜まで車で追いかけたこともあったという。東名高速はまだない時代のことだ。「今も大して進歩してませんがね」と笑う上西一永社長。一歩ずつ前に進む中、先代の上西幹一社長は温かく見つめていた。社員がどんな失敗をしても、じっと黙って笑っているだけだった。そんな社長率いる大洋化学が劇的に変わる日がやってくる。
碁石、将棋駒、サイコロを生産していた縁からオール樹脂製の麻雀牌の開発を始めたのだ。それまでは象牙又は牛骨に竹を裏打ちしたものが麻雀牌だったのだ。戦後のレジャーブームで麻雀牌は大ブレイク。日本一の麻雀牌メーカーに駆け上がった。
今ではシャワーヘッド、インスタントコーヒーのキャップ、足に優しい透水性ブロックなど幅広く広く手がける。一方、会社をここまで押し上げてくれた麻雀に対しては昭和62年に全自動麻雀卓も開発し、トップシャアを誇る。今は下火になったといわれる麻雀の楽しいゲーム性を残したいと女性参加者が多いカルチャースクールも開催している。
「厳しい得意先様に品質についての指導をいただき、成形に組立、検査技術を磨き、ISO取得で一層品質重視の姿勢が社風として定着し、今後とも品質重視でモノづくりの競争力をつけていきたい」と上西社長。2009年「元気なモノ作りの中小企業
300社」にも選ばれた大洋化学の挑戦はまだまだ続く。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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