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2007年の記事

 

 

 

 

 

鷹山工房株式会社

 

■“光放つ有田焼”へ創意工夫重ねる

業種:光を放つ有田焼の開発製造
鷹山工房株式会社


創意工夫というものは大変なことだとつくづく思う。鷹山工房株式会社(佐賀県有田町、山下靖弘社長)が商品化に取り組んだ“光放つ有田焼”開発への挑戦、まさに創意工夫の苦闘がにじむ。

同社の設立は2004年(平成16年)11月。山下社長も30代前半の青年経営者。若いベンチャー企業を想起しがちだが、そこに至るまで、10年余の技術開発の日々がある。山下社長の父親で、同社の副社長を務める山下建比古氏がその中心。20代半ばから縁戚の窯元に師事し有田焼に打ち込んできた建比古氏が1990年代はじめ、「有田焼の新しい上絵付けとして蓄光顔料を使いたい」という新技術への挑戦の夢を抱く。開発が実現すると、光を放つ有田焼として伝統技術の新生面を開くという画期性を持つと建比古氏は奮い立った。子の靖弘氏の助けも借りながら、取り組みが始まった。

道は平坦ではなかった。蓄光剤は太陽や蛍光灯の紫外線を含む光を吸収して蓄え、暗所で青や緑の可視光に変えて徐々に放出する材料。特殊な金属とガラスの混合されたものだ。これを母剤に混ぜ、焼くと透明になり、蓄光剤の色を通す。理屈では、青や緑の光を放つ有田焼の皿や器が得られるのだ。ところが、母剤に蓄光剤を入れると膨張率が大きく変わり、塗る白磁の素地と相性が悪くなり、ひびが入ったり、蓄光剤がはがれたりと散々。よく光らせるには厚く塗らなければならないが、そうすればするほど結果は悪い。ベストの調合にたどりつくのに実に6年の歳月がかかった。靖弘氏のコンピュータ力も調合率の算定に貢献する。同じ夢に取り組んだ同業が次々撤退する中で山下親子は粘り抜き、未踏技術の開発に成功する。

特許出願、会社設立を急いだ。以来、光を放つ皿、グラス、タイルなどを次々と商品化、有田焼のニュージャンルとして顧客開拓に全力の毎日だ。新たな用途も手ごたえが出てきている。避難誘導標識の分野だ。映画館はじめ建物の
内部でよく見かける。暗がりで特に力を発揮する。蓄光磁器の出番だ。佐賀の伝統ある地域資源、有田焼に異種技術を融合させ、新しい世界を創意工夫で切り開いている同社、これからもアクセルを踏み続けるに違いない。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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