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2008年の記事

 

 

 

 

 

株式会社田中製作所

 

1社依存から脱却し不況を乗り切る

業種:金型製作、プレス加工、組み立て
株式会社田中製作所


サブプライム問題や原油価格の高騰などが世界経済に重くのしかかっており、日本もようやく回復軌道の乗った景気が難しい局面にさしかかっている。日本は2回にわたるオイルショック、急激な円高、バブル経済の崩壊など危機的状況を幾度となく経験した。これらの危機を知恵と努力で何とか乗り切ってきたが、個々の段階では倒産に追い込まれたり、大リストラを余儀なくされたりした企業が多い。株式会社田中製作所(鳥取市)も第1次オイルショックでは大きな痛手を被った。

当時、金属部品の加工を主体にしていたが、大手メーカー1社に生産量の7割以上を依存していたため、受注が激減してしまったのだ。大手メーカーに泣きついても動きがとれない状態だった。この時は何とか乗り切ったが、「中小企業は1社への依存が大きいと、場合によっては倒産してしまう」という教訓を得た。そして「1社への依存度は40%以下に押さえよう」と考え、リスクを分散するため新たな顧客獲得と、そのためのツールとしての技術開発に心血を注いだ。

同社は溶接とボール盤による穴開け加工からスタート、さらにプリント基板の組み立てやプレス加工を手がけ、金型製作やコネクター生産へと拡大した。今では金型製作、プレス加工、組み立ての3事業がうまくワークしている。景気の良い時にはプレス加工や組み立てなど量産品の受注が大きな比率を占めるが、複数企業から受注しているため、1社の占有率は30%を下回るようになった。景気が悪くなれば金型の試作などが増えるため、オイルショック当時に比べ経営バランスは大きく改善されている。金型試作品は半年後の量産受注の先行指標ともなるため、経営計画が立てやすくなるなどのメリットも生まれた。

受注先の拡大を図るため、生産技術面で様々な工夫をしている。金型一つとってもメンテナンスしやすい型構造にするなど、随所にアイディアを盛り込んでいる。同社では現在、高強度アルミニウムという難加工材による部品製造を、プレス加工で可能にする技術の開発を急いでいる。「戦略的基盤技術高度化支援事業」に採択されたもので、実現すると高強度のアルミ部品がプレスから生まれることになる。

こうした技術力が裏打ちとなって受注先が拡大しているわけだ。「田中製作しかできない生産技術が売り物」というほどで、セットメーカーとの関係は単なる下請けではなく、パートナーと考えている。新たな不況が来ても太刀打ちできる体制ができあがったともいえる。不況によるリスクを回避するには得意な分野を持つなど、1社依存を避ける工夫が必要だろう。








著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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