(株)テレメディカ
■「在宅医療の広がりで"変わる薬剤師"に照準」
業種:薬剤師のeラーニングシステム提供
(株)テレメディカ
「フィジカルアセスメント(PA)」とは、打診・聴診・触診など、患者の身体に触れて、症状の把握や異常の早期発見につなげる行為の総称で、日本語では「身体診察技法」と言われたりしている。専ら医師が関わるものと思われがちだが、実は、薬剤師も、ここへきて、薬の副作用チェックなどのために、このPAに取り組むようになってきている。新たな事態を商機と捉えて、PA関連の新事業に乗り出したのがテレメディカ(川崎市、藤木清志社長)だ。同社では「在宅医療の広がりとともに、(医薬品の)市場は大きく変化していく」(藤木社長)と見極めて、二の矢、三の矢の準備にも抜かりはない。
同社は、薬剤師であり、大手製薬会社出身の藤木社長が平成24年(2012年)に設立した。高齢化の進展、それに伴う在宅医療の増大といった流れが、医療や医薬品の在り様を大きく変えていくと見て取り、起業に踏み切った。変化の方向性は、一言で表すと「薬剤師の存在感が高まっていく」というものだ。現在、処方権(処方せんを書く権利)は医師だけが持っているが、薬剤師が処方に影響を及ぼすように変わっていく。となると、製薬会社は医師対策と併せて薬剤師対策にも尽力するようになる…。製薬会社や薬剤師の現場最前線に精通した者ならではの予測である。
「変化にチャンスあり」と起業した同社の“一の矢”となるのが、PAの研修をネット上で行うeラーニングシステム「VPA(バーチャル・フィジカルアセスメント)」の事業化だ。現在、PA習熟の一環として取り組まれている、人体模型やシミュレーターを使う実地研修会には、会場に出向かねばならない、技術会得には繰り返し受講が必要、予習復習ができない−などの難点がある。それらの難点を解消すべく開発したのがVPA。目下、テスト配信中で「大手製薬会社やチェーン薬局から上々の評価を得ている」(藤木社長)。
同社では当面、対薬剤師の取り組みを重要視する製薬会社向けにVPAを供給していく。製薬会社の「潜在顧客となる薬剤師との結びつきを強めたい」とのニーズに応える戦略で、製薬会社が薬剤師のPA研修に利用することを促していく。次いで、MR(医薬情報担当者)研修・医師対策としてのVPAの活用を働きかけ、また、薬剤師業務を支援する人工知能システムを提供するなど、二の矢、三の矢を放って、新市場を自ら切り開いていく。
ところで、薬剤師になるための薬学教育の期間は、平成16年(2004年)の薬剤師法改正により、4年制から6年制へと2年間の延長が図られている。6年制のもとでは、4年制ではなかったPA研修が施されている。VPAには、そうした教育現場に生じたギャップを捉えて開発したという面もある。変化やギャップを一早く察知し、新事業を推進する同社は『在宅医療とセルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)の普及を支援する』との理念を掲げている。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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