特殊技研
■技術力と信頼性で大企業との取引に道
業種:金属パイプ曲げ加工
特殊技研
「金属パイプを曲げる」―素人目には単純な作業と受け取られがちだが、これがなかなか難しい加工である。何しろ依頼者の図面どおりにできないというのがパイプ曲げ加工業界の常識ともなっているぐらいなのだ。このため顧客の注文を断る曲げ加工メーカーも出る。こうした中、特殊技研(さいたま市)は、「よそで無理と言われたものでも、図面で描ける曲げ加工は何でもやる」(小澤義典社長)と本物の職人集団を目指して挑戦している。
曲げ加工による製品には例えば、自動車やオートバイのマフラー、階段の手すりなどがあるが、同社は原子炉や火力発電所の配管などという難しい加工を手掛けてきた。しかもステンレスやチタン、プラチナなど硬質の金属に積極的に取り組んだ。「よそではできないから何とかならないか」という依頼者の仕事を請け負うたびに試行錯誤を繰り返し、どんな金属も克服してきた。現在は曲げ加工の基本である鉄パイプ加工については特別の場合を除き、ほとんど手掛けておらず、難しい仕事ばかりを請け負っている。
曲げ加工のキーワードに「曲率」がある。曲げ半径を金属のパイプ直径で割った値で、「パイプ直径とほぼ同じ曲率を曲げるのは極みの世界」(小澤社長)だ。同社の場合、これまで曲率1.16倍までの加工を受注していた。ちなみにパイプ曲げ業界で曲率1.5倍に対応できるのは30%程度といわれる。同社では、これをさらにパイプ直径の0.98倍という、芸術的ともいえる曲げ加工の事例を実現した。機械に取り付ける金型構造の設計を変更したり、パイプを押し出す推力を改善するなど、そのための試作は何十回にも及んだ。
難しいものばかりを請け負って力をつけてきた同社。「図面を見る前からできないと言うな」という、父である小澤敏男会長の職人魂が小澤社長にもしっかり受け継がれている。一方では、培ってきたノウハウを電子的に管理するなど基本的な組織としての蓄積を行っていることも大きい。現場の職人のアイデア、知恵を曲げ加工に合理的に生かす一貫した工程が育まれているのである。
同社は、台湾のパイプベンダーメーカーの日本総代理店となっていることもあって、インターネットによる情報発信力もフルに生かす。今後「ウェブによる工場・商社・販売」の体制を整えていく。また次の事業展開として「食」分野を考えており、これをものづくりと組み合わせていく構想もある。職人集団イコール人の知恵と情報通信、それに農業の融合という、新たな世界を切り拓く土壌はすでに整っている。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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