株式会社ヤザキ
■帽子ひと筋に、日本一を目指して
業種:帽子メーカー
株式会社ヤザキ
「プレス機械を使って1回でポンとできてしまうような製品と違って、帽子は各パーツがきめ細かく分かれているため大量生産ができません。ここにこそ大手との競争の中で生き残っていける要素があるんです」−帽子作りひと筋に37年。(株)ヤザキ(大阪市)の矢崎高清社長はさらりと言いのける。
帽子の小売価格は1個1500円から5000円程度。消費者には手ごろな値段のようだが、誰でも手軽に買うかとなると、そうとは言いがたい側面がある。しかも大人用、子供用、女性用、男性用、業務用と、色、デザインなどが流行や季節によって微妙に変わり、変化が激しい。言わば帽子は野菜や果物と同様の「生鮮商品」のようなもの。このため商品作りにはファッション性に加えて、スピード開発・生産が求められる。
矢崎社長は街を歩いていても、すれ違う人の帽子のファッションにいつも注意を凝らす。売れ筋情報は素早くチェックし、いつも自分の目で確認する。評論家の見通しや販売時点情報管理(POS)のデータは頼りにならないという。帽子は何かのきっかけで爆発的に売れることもあるが飽きられるのも早い。だから参入と撤退のタイミングを少しでも見誤ると大量の返品在庫を抱えることになる。
商品の性質を考えれば、メーカーでありながら小売業のセンスも必要だ。体力のある大手企業に対し、同社は基本的には手作りで、職人の腕と商品開発力小回りの良さで生き残ってきた。本社ショールームに並ぶ帽子の数は常時1200種類以上。しかも「1年で3分の2に近い商品が入れ替わる」(矢崎社長)と言い、流行のスピードの速さには驚くばかり。
最近売れた商品に例えば「モコモコ」の愛称で親しまれる女性向けのニット帽がある。「女子高生がよく買ってくれる」(同)。また安定成長を目指す点から広告宣伝のノベルティーグッズ用として売り込んだり、宅配便会社のドライバー向け制帽分野も開拓した。矢崎社長は「帽子で日本一を目指す」とし、創業以来他のファッション品への多角化を行わなかった。この帽子にこだわる「一本道」が、不況の風にも耐えられる強い企業を作り上げたと言える。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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