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済生会・東京都済生会中央病院
定年退職事件

(東京高裁平成12年12月25日判決)

【事案の概要】

Yは、その支部であるAにおいて、Xを雇用して、B病院の事務局次長に任命し、その後A参事の資格を付与し、更にB病院の総務部長に任命した。そして、B病院に勤務する職員につきB病院就業規則が定年として定める60歳にXが達したので、Xを定年扱いとした。

これに対し、Xは、参事はAの管理職の職位であり、参事の定年は、A就業規則が管理職の定年として定める70歳であること等を主張し、定年退職したことを争うこととした。


【判決の要旨】

(本件雇用契約を規律する就業規則について)

就業規則は、企業経営の必要上労働条件を統一的、かつ、画一的に決定するものであるが、企業における個々の事業場を単位として作成、届出がされるものであり(労働基準法89条、90条、92条参照。なお、労働組合法17条参照)、それが合理的な労働条件を定めているものである限り法的規範としての性質を認められる(最高裁判所昭和43年12月25日大法廷判決(秋北バス事件))。したがって、同一企業であっても、事業場が異なるのであればそれぞれ異なる内容の就業規則を制定することは可能であるが、それぞれ合理的な労働条件を定めているものであることを要するし、就業規則の規定内容が異なることが取りも直さず労働基準法3条、4条に違反することとなるのであれば、その部分が無効となるというべきである。なお、退職に関する事項が就業規則の必要的記載事項とされている(労働基準法89条3号)ことからすると、各事業場の就業規則で異なる定年年齢を定めること自体は許されると解するのが相当である。

同一企業の複数の事業場にそれぞれ異なる内容の就業規則が制定されている場合に、その複数の事業場の職務を兼務している労働者がいるときは、各就業規則の中に適用関係を調整する規定が設けられていればそれに拠ることになるが、調整規定が設けられていない場合には、ある事業場の職務に関しては当該事業場の就業規則が適用になるのが原則であると解するのが相当である。ただ、右原則を適用した結果不合理な事態が生じるような場合、あるいは、複数の事業場の職務が明確に区別できないような場合等には、各就業規則の合理的、調和的解釈により、その労働者に適用すべき規定内容を整理、統合して決定すべきである。

本件雇用契約締結当時、A就業規則には、管理職につき70歳、それ以外の職員につき60歳という定年条項があり、B病院旧就業規則には、解雇事由として「老齢により爾後業務に耐えられないと認めたとき」を掲げていただけで、定年に関する規定はなかったから、定年に関する両者の規定は異なっていた。ただ、B病院旧就業規則は、右の解雇事由を掲げていたことからも明らかなとおり、定年に関して規定していなかったからといって、B病院に勤務する職員について終身雇用を保障する趣旨であったわけではなく、むしろ、B病院に勤務する職員についてはB病院従業員組合との間で昭和44年5月16日にB病院の常勤職員の定年を満60歳と定める労働協約が締結され、昭和45年5月16日から施行されていたのであるから、同年10月16日に改正、施行されたB病院旧就業規則は、右労働協約による定年制の規律に服することを当然のこととしつつ(労働基準法92条、労働組合法16条参照)、右労働協約の規範的効力及び労働組合法17条所定の要件を満たすとすればその一般的拘束力による定年制の規律に反しない限りにおいて、個別の雇用契約によって定年が合意され、あるいは定年制を内容とする労使慣行が形成されることを許容する趣旨であったと解するのが相当である。(なお、就業規則に優先する効力を有する労働協約によって定年制が導入されるのは当然のことである。)。そして、Xが60歳に達した平成9年2月11日の時点では、B病院就業規則が60歳(管理職を含めるか否かにつき争いがあるが、B病院就業規則30条の文言に照らし、管理職も含まれるものと解するのが相当である。)の定年条項を規定するに至っていた。

したがって、Xは、原則として、参事としてはA就業規則の適用を受け、70歳(管理職)又は60歳(管理職以外の職員)で定年となり、B病院総務部長としてはB病院就業規則の定年条項がXにも適用されるとすると60歳で定年となる。(A就業規則上、何が管理職に当たるか列挙されており、そこに参事が含まれていないことを認めた上で、参事の定年は60歳であるとした。)

以上のとおり、A事務局の参事の定年は60歳であり、また、60歳定年を定めるB病院就業規則がXに適用になるとすると、Xは、60歳でYを定年退職したことになる。

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