在職老齢年金の減額 (2015年8月号より抜粋)  
     
 

支店長を嘱託に転換させるが高賃金を払うと年金力全額ストップに?

 

Q

まもなく定年再雇用の予定の従業員がいます。現在、支店長を務めていますが、適当な後継者がいないため、定年後もそのまま現職にとどまる予定です。当然、賃金は高めに設定しますが、いずれ年金の支給が始まり、在職老齢年金の対象になります。賃金がどのレベルを超えると、年金が全額停止になるのでしょうか。

 

 
 

基本月額と総報酬月額相当額により計算式が異なる

定年前と同じポストでバリバリ働いてもらうのなら、本来的には「勤務延長」の形を採るのがベターです。しかし、嘱託転換が貴社の既定方針であれば、それも仕方がないでしょう。

平成27年に定年なら昭和30年生まれで、年金は報酬比例部分が62歳から支給されます(男性の場合)。当面、高めの賃金を支払っていても、年金の関係では問題がありません。雇用保険の高年齢雇用継続給付は、支給額(率)が少なくなる可能性があります。

62歳に達して年金支給が始まれば、被保険者であるかぎりは、在職老齢年金の仕組みが適用されます。しかし、賃金がいくらを超えれば、全額停止になるという基準が一律に決まっているわけではありません。

60歳代前半の老齢厚生年金の場合、年金の支給停止額を定める計算式は「基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額)」と「総報酬月額相当額(標準報酬月額と過去1年の標準賞与額の12分の1)」に応じて異なります。

基本月額=X
総報酬月額相当額=Y

とすると、計算式(月当りの支給停止額)は次のとおりです。

  1. X+Y≦28万円
    調整なし

  2. X≦28万円、Y≦47万円
    停止額(月額)=(Y+X-28万円)×0.5

  3. X≦28万円、Y>47万円
    停止額=(47万円+基本月額-28万円)×0.5+(Y-47万円)

  4. X>28万円、Y≦47万円
    停止額=Y×0.5

  5. X>28万円、Y>47万円
    停止額=(47万円×0.5)+(Y-47万円)

前記の計算式中に現れる28万円を「支給停止調整額」、47万円を「支給停止調整変更額」と呼びます。後者の支給停止調整変更額については、平成26年3月まで46万円でしたが、平成27年4月以降47万円に引き上げられています。(毎年変更される可能性がありますのでご注意ください

在職老齢年金の額については、早見表が公表されています。たとえば、総報酬月額相当額が49万円の人の場合、基本月額がおおよそ23万円以下なら年金が出ません(全額支給停止)。総報酬月額相当額が40万円なら、基本月額12万円がおおよそのボーダーラインとなります。

お尋ねの方が62歳から受給するのは報酬比例部分のみです。報酬比例部分のみを基礎とする基本月額が20万円を超えるのは難しいでしょう。一方、総報酬月額相当額は賞与も含めた額ですから、40万円台となる可能性もあります。このレベルだと在職老齢年金は全額停止とならないまでも、小額にとどまるでしょう。

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