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遺族厚生年金の受給要件 (2016年12月号より抜粋) | |
病気で療養中の従業員がいますが退職してから死亡した場合の年金は? |
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Q |
中途入社の従業員(30歳代後半)ですが、重病で長期にわたって療養が必要な状況です。社歴が短く、私傷病休職の規定上、半年で自然退職という扱いになります。本人は、「自分に万一のことがあったとき、妻に年金が残るようにしたい」と弱音を吐きます。退職した場合、遺族年金に不利益が生じるのでしょうか。 |
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A |
初診日から5年死亡したときには年金がもらえる場合あり 遺族に支払われる年金として、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つが考えられます。 しかし、遺族基礎年金は子のある配偶者(または子)が対象ですから、奥さんだけであれば受給権は生じません。 一方、厚生年金では子のない配偶者も年金を受けられます。妻の場合、年齢に制限はありません(ただし、30歳未満等のときは「有期」となります)。 遺族厚生年金は、次のいずれかに該当するときに支給されます。
私傷病休職期間の満了により、自動退職扱いとなれば、厚生年金の被保険者資格は喪失します。ですから、1の要件を満たすことはできません。ご質問にある従業員が心配されているのは、この点でしょう。 しかし、病気で入院したのは被保険者期間中ですから、「初診日から5年以内」であれば、2の規定の適用があります。 注意が必要なのは、「被保険者期間中に初診日のある傷病による死亡」に限られている点です。それ以外の事由(交通事故等)で死亡しても、遺族厚生年金の対象にはなりません。 退職後に病気が好転し、再就職して厚生年金の被保険者資格を得れば、それ以降、再び1の規定が適用されます。 それでは、療養状態のまま「5年」が経過してしまうと、受給の可能性はなくなるのでしょうか。 まず、病気の種類にもよりますが、「障害が残った」として、本人が障害厚生年金を請求できるケースがあります。その後、不幸にも死亡した場合、障害等級2級以上であれば、前記3の要件にもとづいて遺族(配偶者)に遺族厚生年金が支払われます。 次に、まだ30歳代後半ですから、自分の老齢厚生年金の資格期間は満たしていません。しかし、退職後は国民年金に加入(第1または第3号被保険者)します。ですから、退職前の厚生年金の被保険者期間(=国民年金の第2号被保険者)とその後の国民年金の加入期間を合算すれば、将来的に4の要件を満たすことも可能です。 退職により、遺族年金の権利がすべて消滅するわけではありません。今は「療養に専念」するようアドバイスしてあげてください。
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