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年金の繰り下げ支給(2019年4月号より抜粋)

年金の受給開始を遅らせると金額が増えるというが本当に得なのか

 

Q 年金の受給開始年齢を遅らせると、金額が増えるという話を耳にしました。社長の奥さんがまもなく65歳になるため、繰下げの手続きを検討されているようです。当面、他に収入があるのなら、「急いで年金を受け取る必要もない」のは、そのとおりです。しかし、本当に「遅らせた方が得」なのでしょうか。

 

A 生存期間で得失分かれる
法律の本則では、老齢厚生年金の支給開始年齢は65歳と定めています。
「60歳代前半の老齢厚生年金」は、法律の附則による経過措置です。

 

65歳で受給権を得ても、1年間年金の請求を行わなかった場合、繰下げの申出ができます(厚年法44条の3)。繰下げを選択すると、原則として、1ヵ月について0.7%の割合で年金が増えます。現在は、最大で70歳までの繰下げが可能とされているので、5年(60カ月)の繰下げだと0.7%×60ヵ月=42%の増額となります。

 

本来は20万円の年金だと、28.4万円に増える理屈です。金額だけをみると確かに魅力的ですが、65歳以降の5年間は年金を受け取れません。

 

今は低金利の時代なので、金利は考慮せず、単純に総額で比較してみましょう。

 

20万円の年金を5年間受け取れば、その累計は20万円×60ヵ月=1,200万円です。

 

70歳以降、毎月8.4万円ずつ本来より高い年金を受け取ったとして、「元が取れる」のはいつでしょうか。1,200万円÷8.4万円=142.85…月後です。つまり、11年11ヵ月(81歳と11力月)以上長生きをすれば、得をするという計算です。平均年齢を考えれば(特に女性であれば)、「トライしてみる価値はある」と考える方も少なくないでしょう。

 

ただし、65歳以上で働き続け、「60歳代後半の老齢年金」に在職老齢の規定が適用される人は要注意です。その場合は、繰下げしても年金の増額分が目減りします。たとえば、全額支給停止になる人は、繰下げしても年金は1円も増えません。