外的要因で出勤不能 (2002年12月号より抜粋)  
     
  電車が止まったので自宅待機を命じたときの賃金支払義務はあるのか?  
Q

天候不良等で、公共交通機口関に乱れが出たとき会社としてどう対応するべきでしょうか。当日必要な人手は確保できたので、「電車が動き出すまで、家にいなさい」と電話した場合、賃金をカットしても構わないでしょうか。

 
   
A

個人的な事情で遅刻してきたとき、時間対応で賃金カットされても、文句を言う従業員はいないでしょう。完全月給制で、遅刻・早退しても賃金の減額がない企業もありますが、賃金カットの規定を設ける企業が大多数を占めます。しかし、鉄道・バスが大幅に遅れた場合、従業員本人に罪はありません。このため、遅延証明書等を持って来れば、慣行として遅刻扱いしない方が普通でしょう。

しかし、法的にいえば、労務の提供がなかった分、賃金を払わなくても差し支えありません。

従業員が就労の場所に着くまでの危険は従業員が負担するのが原則だからです。ただし会社が「来なくてよい」などと命令を発すると、話が変わってきます。業務命令には、2通りが考えられます。

第1は、「連絡があれば、いっでも出社できるように自宅で待機せよ」と命じるタイプです。この場合、待機する場所が定められ、命令があれば即応する義務を負う「手待ち状態」にあるわけですから、賃金100%全額を支払う必要があります。自宅で待機する時間は、労働時間になるのです。

第2は、「今日は休業にする」と宣言するタイプです。人手が足りているとか、当日処理すべき仕事がないなどの理由から、「仮に出社してきても、就労を認めない」わけですから、会社の責めによる休業で賃金の60%(休業手当)を支払う必要があります。

出社するしないは本人の選択に任せ、「公共交通機関以外の手段で職場に来た場合には労務の提供を受ける」という状況に限って、賃金カットも許されるという結論になります。自宅待機命令の場合、従業員は自宅で電話のそばから離れることも、何か他の予定を入れることもできません。その代償として、100%の賃金が保証されます。休業と決まれば、携帯の電源を切って、家を離れるのも自由です。フリーな時間が確保できる分・払われる賃金は少なくなります。貴社が「来なくてよい」といったのは、どういう意味か、それをはっきりさせる必要があります。

「仕事の心配はしなくてよい。危険を冒して、無理に出社する必要はない。電車が動き出してから、会社に来てくれればよい」という趣旨なら、自宅待機にも会社の責めによる休業にも該当しないでしょう。

しかし、口ではそういっておきながら、賃金カットしたりすれば労使の信頼関係に悪い影響を及ぼします。話し合いのうえ、(半日)年休を充当するなどの方法で、賃金が減らないように対処するのがベターです。

 

 
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