障害補償の調整 (2002年12月号より抜粋)  
  労災保険から給付が出ても労働基準法上の補償を行う必要がありますか?  
     
Q

先日、業務上災害が発生し、従業員が障害等級14級に認定されました。労災保険から給付が出ましたが、当社の就業規則では簡単に「労基法の定めるところにより災害補償を行う」と定めてあります。もし、本人がこの規定を盾に、50日分の障害補償を請求してきたら、別に払う義務が生じますか。

 
   
A

労基法第77条では、業務上の負傷疾病で身体に障害が残った場合、「使用者」に対して障害補償の支払いを義務づけています。一方、労災保険法第15条では、障害補償年金・障害補償一時金の給付(国が支払い義務者)に関して定めています。

会社は、法律に則って労災保険に加入し、保険料も納付することで、事業主の責任を果たしてきたとお考えでしょう。しかし、それとは関係なく、就業規則には、単に「労基法に基づき補償を行う」とだけ規定している例が少なくありません。

そうなると、労災保険からお金が出ても、会社としては就業規則の条文に基づき、障害補償を支給する義務を別に負うような気もします。

しかし、労基法の中には、「労災保険法に基づいて労基法の災害補償に相当する給付が行われるときは、使用者は補償の責を免れる」という規定があります。就業規則の文言に従って、労基法に基づく補償を行うときも、それより多い金額が労災保険から払われるときは二重に払う義務はないのです。

14級障害に対する給付日数は労基法が平均賃金50日、労災保険は給付基礎日額56日です。しかも、労基法の平均賃金と比べると、労災保険の給付基礎日額には最低額の補償もあり、私傷病期間を除外するなどの特例もあります。ですから、労災保険の給付内容が労基法を上回り、使用者が追加で補償する必要はありません。

それはともかく、就業規則は、せめて「労働基準法および労働者災害補償保険法の定めるところにより」と改定し、必要なら通勤災害にも触れておくべきです。

 

 
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