社長の労災保険  (2003年5月号より抜粋)  
     
 

子会社設立で社長を命じた社員の労災をどうカバーしたらよいでしょうか?

 

Q

今度、製造部門の一部を、別会社にする計画です。社長には、当社従業員が就任しますが、もちろん、他の従業員と一緒に、現場作業に従事します。この場合、労災保険の適用はどうなるのでしょうか。

 
   

A

たとえ形式上の任命でも、会社の代表取締役は労働者に該当しないので、そのままでは労災保険の適用はありません。

しかし、中小事業主の場合、ご質問にあるように自ら現場作業に従事する例も多く、また事故の危険をすべて負担する資力に欠けるのが普通です。

このため、労災保険では、「労働者に準じる者」の特別加入を認めています。製造業では、従業員数300人以下の中小事業主は、加入申請ができます。ただし、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していることが、条件になります。特別加入する場合、社長の労働者としての賃金額を確定するため、2万円から3,500円の13段階の給付基礎日額のうち1つを選択します。

保険料率(第一種特別加入保険料率)は、会社の事業の種類に応じて決まる労災保険料率と同じです。特別加入したからといって、すべての事故が補償されるわけではありません。労働者として働いていた間の業務上の災害、通勤災害は対象になりますが、事業主業務に従事している最中は、補償範囲から除外されます。

昨年4月に、この業務上外の判定に関し、重要な改定が実施されたので、ご説明しておきます。従来、時間外労働に関しては、準備・後始末のほかは、他の労働者と一緒に業務している場合に限って、労災認定されてきました。しかし、改正により、他の労働者が時間外を終えたあと、「それに接続して行われる業務」も補償対象に加えられました(平14・3・19労働基準局長通達)。

社長一人が居残り作業中の事故も、救済されるようになったのです。補償範囲の拡大も踏まえ、特別加入の利用促進が望まれます。

 

 
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