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嘱託社員の年休 (2003年6月号より抜粋) | |
3ヶ月ごと更新の嘱託社員に年休を5日づつ分割付与できるか? |
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Q |
3ヵ月ごと更新の嘱託社員に年休を5日ずつ分割付与できませんか定年退職する社員を、歩合制の営業社員として再雇用します。 |
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A |
定年退職で正社員の身分を失い、形式的には契約期間3ヵ月の期間雇用社 定年・再雇用と同時に勤続年数がゼロにリセットされ、勤続6ヵ月後にはじめて10日与えるといった処理はできません。年休付与の基準日が到来すれば、正社員の入社日からカウントした勤続年数に応じて、年休を与える必要があります。通常は、20日の限度に達しているでしょう。 身分の切り替えがあっても、同一企業で継続して働いている限り、年休算定のベースとなる勤続年数は増えていきます。退職金を清算しても、何の関係もありません。継続勤務を中断するために、定年後、一定期間休ませるという手続きを踏んだうえ、再雇用しても、そんな小細工は通用しません。「実態として勤務が継続している」と判断されれば、定年前の勤務期間を通算して、年休を付与する義務が生じます。 このため、3ヵ月の期間契約で再雇用しても、その期間中に年休付与の基準日が到来すれば、従来どおり20日の年休を与えないといけないという結論になります。仮に3ヵ月で雇止めと決まっても、従業員は新たに付与された20日の年休を、その3ヵ月内にすべて取得することができます。 こういう説明をすると、経営者の大部分は「それは、ちょっと負担が大きすぎる」と感じるようです。そこで、ご質問のように、契約期間に応じて、年休日数を按分付与できないか、という発想が生まれてきます。「1年で20日の年休の権利があるのだから、3ヵ月分として5日与えれば十分だ。5日ずつ4回与えればちょうど20日だから、法的にも問題ないだろう」というわけです。 しかし、労働基準法では、年休の付与に際して、将来の勤務期間はまったく考慮しません。過去、どれだけの期間勤続したか、それだけを基準に日数が割り出されます。たとえ、将来の勤続期間が10日でも、20日の年休を与える義務があるのです。 もちろん、退職前に年休権を行使しない場合、残余の休暇権は当然に消滅するので、この場合には、10日の年休消化がマックスになります。ですから、将来の勤務期間を条件に、年休の付与日数・時季を制限することはできません。分割で付与するのは、法違反です。 期間満了で雇い止めが決まれば、当然、従業員は残った年休を申請してくるでしょう。この場合、「解雇予定日を超えての時季変更は行えないものと解する」(昭49・1・11基収第5554号)ので、原則として、請求を認める必要があります。
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