判例 パートの解雇 (2003年6月号より抜粋)  
   

 

 
 

パートの解雇はやむを得ない

Aプラスチック事件 前橋地方裁判所(平14・3・1判決)

現地採用のパート社員の場合、剰員整理のために配置転換しようとしても、適切な職場のないケースが少なくありません。転勤は無理、職種転換も不可能という場合、会社としてどこまで雇用保証する義務があるのでしょうか。本事件では、半日勤務という特殊性も踏まえ、解雇もやむを得ないという判断が下されています。

「え、仕事がなくなったら、クビだろう?」。意外と、そういう感覚の経営者も少なくないのが現実です。パートの職場がなくなるのは、会社の経営も左前になっている証拠です。パートの雇用保証など、考えている余裕がないのが普通です。

しかし、判例をみると、ケースバイケースですが、相応の配転努力を要するという立場が一般的です。本件は、現地採用され、半日勤務という特殊な形態で働くパートが対象でした。結果的には、「解雇もやむなし」という結論が出されていますが、そこに至る経過をたどることで、裁判所の基本的な考え方を知ることができます。

裁判を起こしたパートは、関東工場で半日勤務に就いていましたが、会社は半日勤務自体の廃止を決め、対象者4人に対し1日勤務の準社員への転換を勧めました。その後、機械化に伴う剰員整理を理由として退職勧奨を実施し、さらに慰労金の提示、再就職先斡旋の申し出も行いましたが、原告パートはすべて拒絶しました。最終的に会社は解雇通告しましたが、これを不服として提訴したのが本事件です。

裁判所は、まず前提として「半日パートという職種の廃止は、配置の困難性、機械化の進展状況などに照らし、合理性が認められる」という判断を下しました。

そのうえで、転勤と職種転換と、両方の可能性を検討しています。転勤に関しては、「関東工場に限定して雇用され、前橋市に居住していたことから考えれば、原告の都合や交通費、住宅費といったコストの面に照らし、事実上不可能」と述べています。「アルバイトないし準社員への転換」をめぐっては、「アルバイトについては、重量のある物を運搬する業務が含まれているか、専ら夜勤であるため、女性である原告をアルバイトに配置転換することは不可能であり、準社員については、機械化の影響で準社員自体にも余剰人員があることや、原告の仕事振りからすると、配置転換はできないものといわざるを得ない」と総括しました。

会社側の言い分どおり、「どこにも持って行き場がない」という状況が認められたわけです。逆にいうと、配置転換の可能性があれば、やはり会社として努力する義務があるということです。また、本事件では、解雇に至るまで、慰労金の支払いや再就職の斡旋など、会社が誠意を尽くした対応を取った点も、裁判所は斟酌しています。

「いきなりの解雇」は、従業員がかたくなな態度を取ったときに、トラブルの元となるので注意が必要です。

 

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