契約社員の雇用期間 (2003年10月号より抜粋)  
     
 

契約社員の雇用期間を限度いっぱいの3年に切り換えた方がよいか?

 

Q

当社では、1年契約の契約社員を数人雇っていますが、実態は、毎年、契約を更新しています。改正労基法が成立して、有期契約の上限が3年に延びましたが、今後は、3年契約に漸次、切り替える方がよいのでしょうか。

 

 
 

A

改正労基法は、7月4日に公布されましたが、まだ施行日は確定していません。附則で、公布後6ヵ月以内に施行とだけ示されています。

改正法では、有期契約の上限について、高度資格者(弁護士や公認会計士など。具体的な範囲はいずれ告示で決定)と60歳以上の高齢者は5年、それ以外は3年と定めています。

有期契約の期間があまり長いと、労働者が不当な足留めを食うおそれがあります。このため、労基法制定以来、原則1年が上限とされていました。しかし、経営者側から、「経済活動が複雑・高度化し、長期の契約を結ぶ必要性が高まっている」という要望の声が強まっていました。

今回の改正は、そうした要請に応えるものです。しかし、いきなり上限3年の原則を完全適用するのは、不安という意見もありました。このため、国会で修正案が出され、経過措置が設けられました。

まず、附則第3条で、施行後3年を経た時点で、有期契約の長期化による弊害があれば、必要な措置を講じると定めています。

次に、第137条で、「必要な措置が講じられるまで、民法第628条の規定に関わらず、契約期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いっでも退職することができる」という規定を追加しました。

民法第628条は、有期契約を「やむを得ない事由により解除する」場合の規定で、「解除の事由が一方の過失によりて生じたるときは相手方に対して損害賠償の責めに任ず」と定めています。

つまり、3年の有期契約を結んで、どちらかが一方的に途中解除した場合、解除された方は損害賠償を請求できるのです。しかし、「民法第628条の規定に関わらず、いつでも退職できる」のですから、1年経過後に労働者が途中解約したときは、会社は損害賠償を請求できないという結論になります。

ですから、改正法が施行された後、契約社員の契約を漸次、3年契約に切り替えたとしても、第137条の経過措置が終わるまでは、会社にとってあまりメリットはありません。

会社が優秀な人材を抱え込むために、あえて3年契約を選択するのなら、それは経営側の判断ですから、何ともいえません。プロ野球やサッカーの世界では、複数年契約は珍しくありません。

しかし、そうした配慮が不要なら、あわてて3年契約を結ぶ必要はないでしょう。仮に3年契約を結んだとしても、報酬の改定は、1年ごとに実施するのがベターです。

 

 
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