判例 非常勤講師の雇止めは有効 (2004年2月号より抜粋)  
   

 

 
 

25年勤続者も有期契約に変わりない

平成16年1月1日から、「有期労働契約の締結、更新・雇止めに関する基準」が発効します。使用者側からの一方的な雇止めには、従来にも増して厳しい制限が課せられます。しかし、雇止めがすべて無効になるわけではありません。裁判で争うことになっても、適法な手続きを取ってさえいれば、使用者側にも勝ち目があります。勤続25年の非常勤講師が、契約打ち切りとなった実例を学びましょう。

名古屋地方裁判所(平15・2・18判決)


訴えを起こしたのは、短大で20年から25年にわたってピアノを教えていた非常勤講師たちです。短大側は、平成9年にカリキュラムを改定し、10年4月以降、講師の委嘱を取りやめる旨、通告しました。この仕事がずっと続くと考えていた講師たちにとっては、まさに青天の霹靂(へきれき)です。裁判で争う道を選択したのも、心情的にはよく分かります。

講師側は、こうしたケースの決り文句を使って、短大側の一方的措置に反論しました。「形式上1年契約になっていても、長期間契約を更新してきたことにより、実質的に期間のない契約と同じ状態になっていた」「仮にそうでなくても、期間満了後の委嘱継続を期待することには合理性があった」というものです。

裁判所が認定した契約更新の実態は、「短大では、非常勤講師の採用に当たり、その委嘱期間を1年以内に限定しており、次年度も委嘱を行う場合は、学科会議と教授委員会で審議して、教授会で決定した後、契約書を送付し、相手方に押印のうえ返送してもらってから、次年度の契約を締結するという手続きを取っていた」というものです。期間満了ごとに、次期の必要性を検討したうえで、また新しい契約をキチンと結び直すという形を取っていたわけです。ここが、肝心な点です。

裁判所は、この事実に着目し、「単に非常勤講師としての契約が長期間反復更新されたとしても、非常勤講師を常勤教員として扱う旨の合意が成立したと見なしうるなど特別の事情がある場合を除き、非常勤講師の地位が、補助的教員たる性格を脱して、常勤の専任教員としての地位に転化する余地はないと解するのが相当である」と結論付けました。たとえを用いれば、1メートルのバーを何十回飛び越えたとしても、2メートルのバーをクリアしたことにはならないといったところでしょうか。

講師側は、今まであった仕事を廃止してまで契約を打ち切るのは、権利濫用だとも主張しました。これに対しては、権利濫用を認めるためには、「特に不当な意図をもってなされた等の特段の事情が必要である」が、「もともとカリキュラムの編成は短大の自治に任せられている」のだから、講師側の主張には理由がないと判示しました。

本事件は、使用者側のほぼ完勝といえる結果ですが、それは1年ごとの委嘱という原則が、手続き上、明確に示されていたからです。忘れてならないのは、漫然と契約更改していたなら逆の結果になりかねなかったという点でしょう。

 

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