定年制廃止で高年齢者方改正の影響を回避?(2004年5月号より抜粋)  
     
 

定年制廃止すれば高年齢者法改正の影響を回避することが可能になりますか?

 

Q

高年齢者法が改正され、65歳までの定年引き上げが義務付けられると聞きます。65歳まで、一律で雇用を保障するのは、零細企業にとって、負担が大きすぎます。思い切って、米国スタイルで定年をなくすという対応は可能なのでしょうか。

 

 
 

A

逆に負担が増加

今回議論されているのは、「65歳までの継続雇用」を努力義務から強制義務に格上げするか否かという問題です。「定年を定める場合の年齢」に関する高年齢者法第4条は、見直しの対象ではありません。事業主は、定年引き上げのほか、継続雇用制度・再雇用制度等を利用して、「65歳までの継続雇用」を実現すれば、法的義務を果たしたことになります。

しかし、法改正が決まれば、まず平成18年4月に、継続雇用の最低年齢が62歳に引き上げられます。施行期限は目前です。最終的に65歳までの雇用が義務付けられるのは、平成25年度です。

「一律で65歳まで雇用を保障するのは大変」という理由で、仮に定年制を廃止したとします。就業規則をみただけでは、その会社が高年齢者法に違反しているのかどうか分からなくなると同時に、「何歳まで雇用を保障する」という具体的根拠も消えます。いいことずくめのような気もします。

しかし、現実はそう甘くありません。定年がなければ、年齢を理由に自然退職させることはできないという理屈になります。契約関係が終了するのは、本人が自発的に退職願を提出するか、死亡するか、会社が解雇するか、いずれかの場合に限られます。

平成16年1月施行の改正労基法により「解雇する場合には、合理的な理由が必要」という原則が、明文化されました。

ですから、定年のない会社では、65歳を過ぎた後の解雇についても、その都度、「合理的な理由」があるか、検証が必要になります。高年齢者法の規定に沿い、65歳までに限って継続雇用制度を整備する方がよほど負担が少ないといえそうです。

また、退職金制度がある会社の場合、定年の廃止は退職金額の増大をまねきます。勤続年数が長くなるわけですから当然のことです。60歳で定年退職していただき(その時点で退職金を支給)、翌日から再雇用するのが退職金の観点からも企業の負担が増えません。

 

 
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