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賃金の毎月払い (2004年6月号より抜粋) | |
1年単位変形制で途中退職者の賃金清算をまとめて実施しても良いか? |
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Q |
1年単位変形労働時間制を採る場合、途中退職者については、賃金清算が必要だと聞きます。たとえば、半年後に退職した従業員について、半年後にまとめて清算するわけですが、残業代を半年分、一括で処理するのは、毎月払いの原則に反します。法違反を犯さないためには、どう処理すればよいめでしょうか。 |
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A |
「確定後」で問題ない 季節によって業務に繁閑がある場合、1年単位変形労働時間制を利用すると、便利です。閑散期に少なく働き、そこで浮いた分を繁忙期の所定労働時間に上乗せすることができるからです。1年ならして働く人は、これでも問題ありません。 しかし、忙しい時期に働いて途中離脱した人は、後で楽することができないので損をしてしまいます。 そこで、賃金清算の規定が設けられています。たとえば、半年だけ、1年変形制で働いた人がいたとします。半年分の実労働時間、その間、すでに支払った割増賃金に対応する残業時間は、当然、会社はキチンと把握しているはずです。 実労働時間から、次の2つの時間数を差し引きます。 (2)は、1年変形で働いた期間に対応する法定労働時間の総枠です。差し引き残った時間数に、割増賃金の算定単価×1.25を掛けたものが、清算すべき賃金です。 この清算賃金は、半年にまたがって、累積されたものと考えるのが、自然でしょう。最後の1ヵ月に集中して発生したものではありません。 残業代を、半年分累積しておき、それをまとめて半年後に支払ったとしたら、1円も残さず全額清算したとしても、法的問題が残ります。ご指摘のように、月例払いの賃金(残業代も含む)には、労基法第24条により毎月払いの原則の適用があって、この要件を満たさないからです。 しかし、1年単位変形制の清算は、それとは少し性格が違います。そもそも1年単位変形制では、全期間働いた従業員についても、1年の法定労働時間の総枠を超えた分の残業代を清算する義務があります。 この問題について、「総枠を超えた労働が行われたか否かは、変形期間終了まで確定しない。この場合、割増賃金は、変形期間終了後にまとめて支払えばよいのか」という問に対し、「変形期間終了直後の賃金支払期日に支払えば足りる」と答えた行政解釈があります(平9・3・25基発第195号)。 途中離脱者の賃金清算についても、同様に考えて差し支えありません。ちなみに、この清算金は、正確にいうと残業代ではありません。「時間外労働の規定の例により計算した割増賃金」であるに過ぎません。ですから、この清算分に相当する労働時間は、36協定の協定時間とは別カウントです。
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