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事業場外みなし労働時間 (2004年9月号より抜粋) | |
外勤の営業社員が社内で労働した時間は協定のみなし時間に加算すべき? |
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Q |
当社の営業社員には、事業場外みなし制を適用しています。ところが、中途採用した社員から疑問が出されました。社内業務に就いた場合、その分は協定のみなし時間に「加算」しないと違法だというのです。当社では、社内業務分も含めみなし計算していたのですが、法的に問題がありますか。 |
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A |
会議等の時間は別枠処理 社外で勤務する社員については、会社は労働時間を把握できません。労基法では、「事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いとき」には、みなし労働時間制を適用できると定めています(労基法第38条の2)。 原則は、所定労働時間働いたとみなしますが、労使協定で「業務の遂行に通常必要とされる時間」を定めることもできます。営業社員といっても、毎日、直行直帰するわけではありません。社内で書類作成したり、会議に出たりすることもあります。この場合、労働時間数をどう計算するかは、実は大問題です。 なぜかというと、同じ昭和63年に2つの行政解釈が出されているのですが、その関係が必ずしもはっきりしないからです。 1月1日付基発第1号では、「労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該事業場内の労働時間を含めて、所定労働時間労働したものとみなされる」と説明しています。 一方、3月14日付基発第150号では、「みなし労働時間制による労働時間の算定の対象になるのは、事業場外で業務に従事した部分であり、労使協定についても、この部分について協定する。労働時間の一部を事業場内で労働した日の労働時間は、みなし労働時間制によって算定される事業場外で業務に従事した時間と、別途把握した事業場内における時間とを加えた時間となる」という考え方を示しています。 両者の間で整合性に欠ける点があることは、学説でも指摘されています。しかし、だからといって・労基署が臨検に来たとき、行政解釈に反する取扱いをしていれば、当然、指導の対象となります。 貴社の場合、みなし労働時間を協定で定めているのですから、やはり後者の考え方が適用されるとみるべきでしょう。つまり、中途採用の方の指摘どおり、協定のみなし労働時間に、社内勤務分を「オンして」計算するほかありません(最初からそのつもりで、みなし時間を決めるべきです)。 ちなみに、菅野和夫「労働法第4版」(その後の版では、スペースの関係もあってか、省略されています)では、「事業場外労働に付随して、それと一体的に事業場内労働が行われるという場合には、それらを全体として事業場外労働と把握できる」と解説しています。つまり、社外業務に付随して、営業日誌をつける等の時間は、内勤と考えなくてよいということです。 しかし、それ以外に、たとえば週の始めに数時間の営業会議を開く等の場合には、きちんと別枠処理すべきでしょう。
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