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判例 降格処分と就業規則 (2004年12月号より抜粋) | |
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賃金減もやむを得ず 再三の指導は必要ない 重大な規律違反を犯した社員に対して、経営上の判断として、降職・降格等の処分を行わざるを得ないケースもあります。しかし、本人にとっては大きなダメージですから、猛反発することも予想されます。 大阪地方裁判所(平16・1・23判決) 降格されたマネージャーは、部下の従業員が料金未払いで飲食していたのに見過ごすなど、管理にずさんな一面がみられました。会社は、就業規則の「職務遂行上において、再三の指示・命令にもかかわらず改善がなされず、要求された職務遂行が行われない場合、降格することがある」という規定に基づき、降格処分を実施すると同時に配転を命じました。 これに対し、マネージャー側が処分無効の確認と差額賃金の支払いを求めて争ったのが、本事件です。 降格には、懲戒処分として実施するものと、人事発令の一環として命じるものの2タイプがあります。 就業規則には、「懲戒処分としての降格を行う場合、譴責のうえ、会社が定める期間職位を下げる」という規定も存在しました。しかし、本件処分は、人事処分として発令されたものです。 降格は、職位を下げる降職と職能資格等を下げる(狭義の)降格に分類されます。降職に関しては会社に広い裁量権が認められますが、降格には就業規則上の明確な根拠規定が必要とされています。 会社が取っていた人事体系は、職位と資格を明確に区別せず、職位一本で人事・賃金管理を行うというスタイルでした。基本給は一律12万円で、後は職務遂行能力に応じて職位が決定され、職務給・職位手当が付加されるというシンプルな仕組みでした。 しかし、本件処分を降職・降格のいずれとみても、就業規則上に根拠規定があるため、裁判所は「会社は、就業規則の要件を満たせば、従業員を降格することができ、従業員の職務給及び職務手当もそれに伴い減額されると解することができる」と判示しています。 細かいことですが、会社の就業規則では、文面上、「再三の指示・命令」を受けた場合に限って、降格が可能なようにも読めます。マネージャーは、この点を衝いて、再三の指示はなかったと反論を試みました。 しかし、判決文では、「降格の理由とされた職務の不履行と同一の職務に関し、それ以前に会社から再三指示・命令を受けた場合」という意味ではなく、「同じ種類または性質の指示・命令を再三受けたにもかかわらず、その職務遂行を行わなかった場合など、一連の職務遂行能力に改善が認められない場合」も含むという常識的な判断を示しています。 結論的には会社の主張が通りましたが、無用なトラブルを避けるためには、就業規則の表現にも細心の注意を払っておくことが必要です。ご相談は就業規則相談所まで。
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