判例 パートの期間契約途中の解雇 (2005年4月号より抜粋)  
   

 

 
 

期間途中の解約認められない 雇止めも権利濫用に

パートを雇用する場合、通常、期間契約という形を取ります。本来、期間契約は「やむを得ない」事情がない限り、途中解約はできないのが建前です。しかし、「業務上の必要がなくなった」という理由で、期間満了前に契約を打ち切ってしまう経営者も少なくありません。本事件は、人員整理の手続きを焦ったケースですが、そうした身勝手は許されないことを改めて確認するものです。

福岡地方裁判所小倉支部(平16・5・11判決)


期間契約を結ぶとき、一番分かりやすいのは、仕事に必要な期間があらかじめ決まっていて、その期間に合わせて契約期間を定めるタイプです。仕事が終了すると同時に契約期間も満了し、それで雇用関係も解消されます。

しかし、大半のパート契約では、いつまで仕事が継続するかは明確でないため、取りあえず契約期間を1年、半年と限り、それを更新するというスタイルが取られます。この場合、「期間契約」という意識は薄いのが普通です。

しかし、期間契約を結んでいる以上、どの段階で契約を解消するかは、重要な意味を持ちます。雇用関係を終了させる時期が期間途中なら「解雇」、期間満了時なら「雇止め」と明確に区別されます。

本事件では、3ヵ月契約の契約社員が人員整理のターゲットとされました。対象者2人は、それぞれ17年、14年の長きにわたって契約の更新を続けていました。会社は、期間契約という点をあまり深く考えなかったのでしょう。契約期間の途中で雇用打切りを通告しました。裁判所は、これを「解雇」とみて、有効性の判断を下しました。

民法第628条は、「雇用の期間を定めたるときと難もやむことを得ざる事由あるときは、直ちに契約の解除をなすことを得る」と定めています。逆にいうと、「やむを得ない」事由がないときは、期間途中の解約はできないのです。

判決文では、「本件整理解雇によって削減される労務関係費は会社の事業経費のわずかな部分であって、期間の満了を待たずに解雇しなければならないほどのやむを得ない事情があったとは認められない」と述べています。

それでは、期間満了で雇止めしたとすれば、どうでしょうか。裁判所は「解雇予告には雇用期間満了時における雇止めの意思表示が含まれていた」と解釈し、その妥当性を論じています。結論的には、「実質的には期間の定めのない契約が締結されたと同視できるような状態になっていた」点を考慮し、解雇権濫用法理を類推適用したうえで、雇止めは無効と断じています。

雇止めさえ許されないような契約社員を対象として、期間途中の解雇を実施したのですから、無茶というほかありません。しかし、逆のケースで、解雇はムリだけれど、雇止めなら許されるという状況は考えられます。

長期間雇っていたパートを人員調整の対象とする場合には、少なくとも契約期間の満了の30日前に予告したうえで、雇止めにするというプロセスを踏むべきです。

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