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判例 セクハラ放置は権利侵害 (2005年6月号より抜粋) | |
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女性の賠償請求容認 担当課長に不作為責任 苦情処理の担当者は、いかにして「カドが立たないように」事態を収拾するかが腕の見せ所です。セクハラ等の問題が発生しても、「いきなり処分」よりは「事態を静観する」という方針を選択しがちです。しかし、緩慢な対応が命取りになるおそれもあります。本事件では、担当者の「不作為」が原因で、被書者に対する賠償責任が発生しました。 A市職員事件 横浜地方裁判所(平16・7・8判決) 商品のクレーム担当係など、消費者の怒りを鎮めるため、謝るのが習い癖になっています。企業の苦情担当者も、被害者の訴えをなだめるのを優先し、加害者の処分はできるだけ避けるという対応を取りがちです。しかし、「臭いものにはフタ」という姿勢を取り続けていると、被害者の不信感をあおる結果になりかねません。 本件はセクハラをめぐる訴訟ですが、担当窓口の処理の妥当性が焦点になりました。均等法第21条では、事業主に対しセクハラ防止の配慮義務を課しています。それに基づき、セクハラ指針では、事業主に対し相談・苦情窓口の明確化、迅速・適切な対応等を求めています。 本事件で、女性職員は、上司からセクハラを受けていると相談窓口に訴えました。セクハラ行為の中身は次のようなものです。「バーベキュー・パーティーの際、膝に座らせて、その写真を撮った。歓送迎会等で『結婚しろ』」と発言し、他市の職員に『うちにいいのがいるから』と紹介しようとした」。 今どきでは珍しいほど、古典的なセクハラ例です。 しかし、これに対する窓口担当課長の対応は、緩慢さのきわみでした。「加害者に対する事情聴取から、セクハラがあったことを認識していたにもかかわらず、被害者から事情聴取することもなく、客観的な証拠である写真の収集もしなかった。被害者の求めで面談したときも、本人が異動を希望していると思い込み、4月まで待つように述べただけであり、今の仕事は荷が重すぎたのかもしれないなどと本人の責任であるかのような発言をし、加害者をかばう発言を繰り返した」というものです。 セクハラ事件については、一般に加害者が中高年の役職者で、被害者が若年の女性であるという構図が普遍的です。どちらの言い分を重くみるかといえば、やはり前者という話になりがちです。この担当課長の及び腰の対応について、「気持ちはよく分かる」という管理職も少なくないのではないでしょうか。 しかし、裁判所は「バーベキュー時の言動が重大な人権侵害と評価すべきであることを前提に考えると、担当課長の不作為は、権限や職責の不行使が許容される限度を逸脱して著しく不合理である」と厳しく断じています。結果的には、市に対して、損害賠償の支払いが命じられました。 「事を丸く収めよう」と努力するあまり、被害者女性に対してだけ我慢を強いる対応は誤りです。事案の内容によっては、毅然たる態度を取ることも大切です。
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