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判例 旅費のごまかしで懲戒解雇 (2005年11月号より抜粋) | |
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社金を窃取着服に該当 業務支出と認められず お役所の裏金作りが相変わらず非難の槍玉に挙がっています。公金のグレーな流用はサラリーマン社会の通弊といえますが、小口のつまみ食いには目をつぶっても、悪質なケースには毅然とした態度が求められます。本事件では、出張日数をごまかし、日当・宿泊費を十数回にわたり不正申告していた営業所長に対し、裁判所は「懲戒解雇もやむを得ない」という判断を下しました。 J社事件 札幌地方裁判所(平17・2・9判決) 某公共放送の社員は、公金着服の理由について、「仕事に比べて、給料が安すぎるから」などと、述べたそうです。概して、社金の流用等に対し、従業員はあまり罪悪感を抱かない傾向があるようです。 なぜかというと、不正に捻出したお金を使う場合も、「仕事上の関係者と交友を深めるため」という言い訳が用意されているからです。本当のところ、気の合った者同士の飲み食い・ゴルフ・海外旅行に消費しただけというケースが多いのですが、本人は「業務上の必要性」を主張して、なかなか譲ろうとしません。 本件では、営業所長は「少なくとも15回にわたって、虚偽の申告をして合計22万円余の出張旅費を不正に受給」し、しかも「受け取った旅費等を、直ちに自己の財産と混同させるなどしてこれを費消」していました。 そこで、会社は就業規則中の「社金を窃取着服した場合」に該当するとして、懲戒解雇に処したものです。これに対し、営業所長は、流用の事実は認めたものの、処分は重過ぎる等と主張し、裁判を起こしました。 処分不当と訴える第一の理由は、旅費等を自己の利益を図るために取得・使用したことはなく、交際費等に当てるのが目的だったというものです。社内で懲罰委員会等を開く場合も、不正を犯した人は、ほとんどがこう申し開きすると考えて、間違いないでしょう。 判決文では、「不正受給に係る金員をギャンブル等の遊興費に使用した形跡を窺うことはできない」という事実は認定しましたが、「(不正な経理操作は)、その使途が仮に会社の他の経費に流用する目的であったとしても、懲戒解雇事由(社金の窃取着服)に該当すると認めるのが相当である」と述べました。 営業所長が処分を不服とする第二の理由は、金額が小さく、その大部分(21万円余)はすでに会社に返金済みであるから、処分の相当性に問題があるというものです。 しかし、裁判所は、「現場の責任者として経理を統括する立場にあったにもかかわらず、不正の回数は決して少ないということはできないこと、会社の調査に対して積極的に事実を明らかにすることなく、かえって架空の領収書を根拠に宿泊の事実を主張するなど反省の様子がうかがえないこと」などを挙げ、処分が過重ではないと結論づけました。
「ありの一穴がダムを壊す」という格言もあります。上層部に不心得者がいると全社的な綱紀が緩み、下位職者のなかにも勘違いする人が出かねません。災いの種は早めに摘むのがベターです。
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