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判例 躁うつ病者の拙速な解雇無効 (2005年12月号より抜粋) | |
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専門医の意見を未聴取 回復の可能性があった 精神疾患を発症した社員に対し、会社は過剰反応を起こしがちですが、「不測の事態が起きた後では、取り返しがつかない」と考えて退職処理を急ぐと、手痛いしっぺ返しを受けます。病者てあっても、解雇権濫用法理で手厚く保護されているからです。 本事件では、躁うつ病で「業務に支障が出た」社員について、回復の可能性が残っていたという理由で、解雇無効という判決が下されました。 K社事件 東京地方裁判所(平17・2・28判決) 精神疾患でやっかいなのは、必ずしも出社不能ではない点です。本人が病気を認めず、休職を勧めても同意しないケースが少なくありません。傷病休職期間満了で自動退職という処理が一番望ましいのですが、身体上の病気と違って、本人の意思で休職期間を中断することも可能です。 しかも、精神疾患のある状態で業務に従事し、「とんでもない失敗」をしでかすおそれも否定できません。本件で従業員が罹患した疾病は躁うつ病ですが、一般的に躁状態のときは自らの権限を逸脱し、独断的に物事を運ぶ傾向がみられます。会社では、業務中の対人、対電話の応対ぶりに異常を感じ、危惧を抱いていました。 結局、当人は7ヵ月間休職しましたが、復職後、再び病状が悪化し、社外にも影響が及ぶようになりました。 このため、口頭で解雇を通告したところ、本人は興奮のあまり、その場を飛び出し、その後、強制入院させられるという経過をたどりました。 会社は、解雇に処したのは、止むにやまれぬ選択だったと主張しました。しかし、裁判所は、躁うつ病が原因で業務遂行に支障が出ていた事実は認めましたが、会社側の拙速な対応を指摘し、解雇無効と判示しました。 それでは、どういった点に手抜かりがあったのでしょうか。まず、会社は解雇決定に先立って、専門医の助言を求める努力を怠りました。解雇後に担当医が作成した診断書によれば、「軽躁状態により通院中だが、事務的な作業を行うことに支障はない」というレベルの症状でした。さらに、解雇通告の10ヵ月後には、躁うつ状態は消え、一定の治療の効果が認められました。つまり、「躁状態について、程度が重く、治療により回復する再能性がなかったということはできない」という結論になります。 また、会社規定によれば、最大2年の傷病休職取得が可能でしたが、本人の休職期間は7ヵ月に過ぎませんでした。復職後、病状が悪化した場合、まず再度の休職発令を検討すべきでしたが、そうした措置も講じませんでした。まずいことに、会社は他の傷病者については、長期の休職を認めていました。これでは、平等取扱の原則に反していると非難されても仕方がありません。 細かな対応を一つひとつ検討すれば、会社側に「解雇を回避する意思」が欠如していたのは明白です。従業員に精神疾患が発症した場合、会社は早めに見切りをつけがちですが、裁判所はそう簡単に解雇の有効性を肯定しない点には注意が必要です。
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