判例 ホームページ上での会社批判の正当性 (2006年2月号より抜粋)  
   

 

 
 

雇い止め反対で対外宣伝 内容に行き過ぎなし

インターネットなと情報通信手段が発達すると、労働組合の活動も様変わりします。社外の一般大衆に対し、会社の不当性を訴える場舎、以前はビラ配布が一般的てしたが、最近では、ホームページによる広報活動も活発化しています。本事件では、鮮烈なイメージ映像による会社批判行為も、正当な組合活動として社会通念上許される範囲内てあると判示されました。

A生命保険事件 東京地方裁判所(平17・3・28判決)


労働組合は自己の主張を貫徹するためにさまざまな手段を行使しますが、ビラ配布も古典的な代表例のひとつです。その正当性を判断する際には、配布場所が事業場内か外かが実務的に重要です。

事業場内の場合、職場施設管理権と抵触するので、配布の許可制を定める就業規則の規定も一般的に有効と解されています。ただし、「職場内の秩序風紀を乱すおそれのない」ケースでは、懲戒等は難しい点に注意が必要です。

事業場外では、組合員には原則的に言論の自由がありますから、会社の統制は及びません。しかし、内容次第では「名誉毀損罪」「侮辱罪」等が成立する余地があります。事業場外のビラ配布については、組合による批判が労働者の待遇と関連性があるか否か、全体として真実性が高いか否か等を考慮して、正当性を判断します。

本事件では、生命保険会社が経営上の必要性から4人の有期嘱託社員を雇止めしました。4人が所属する個人加盟の労働組合は、会社と団体交渉を進めましたが、解決の糸口がみつからず、本社周辺でビラ配布等の街宣活動を開始しました。

本事件が「時代性」を感じさせるのは、組合が自己のホームページにビラの映像等を掲載したことです。生命保険会社は、コマーシャルで「(顧客に)大きな安全を届けたい」などのキャッチコピーを流していました。それを逆手にとり、ホームページ上にコマーシャルを引用したうえで、「雇用の約束を守らない会社にいざというときの安心をまかせられますか?」等のコメントを付加したのです。

ホームページの閲覧者は不特定多数で、インパクトのあるメッセージが大衆の関心を引けば、会社のイメージを大きく損なう危険性を見過ごすことはできません。会社が、神経を尖らせたのも、当然です。

しかし、裁判所は、従来のビラ配布の法理を用いて、この問題を処理しています。「本件ビラ・ホームページの内容は、会社の対外的な社会的評価の低下を生じさせ、信用を毀損する内容である」点は認めましたが、これが組合活動の一環であることから、「本件で摘示された事実が真実であるか否か、真実と信じるについて相当な理由が存在するか否か、表現活動の目的、態様、影響ほどうかなど一切の事情を考慮して」正当性を判断すべきと述べました。

結論的には、社会通念上許容される範囲内で、違法とは認められないと判示しています。対外的なイメージ戦略も、組合の採り得る有効な手段のひとつと解されている点は、了解しておく必要があります。

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