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フレックスタイム制を出向者に適用する場合 (2006年9月号より抜粋) | |
フレックスタイム制を出向者に適用するとき出向元の協定が必要? |
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Q |
技術提携の関係で、関連取引先から出向の形で人員を受け入れることになりました。配属先は技術系の部署で、当社では労使協定に基づき、フレックスタイム制を導入しています。本来的には他社に籍がある出向社員に対し、フレックスタイム制を適用する場合、何ら手続を要しないのでしょうか。 |
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貴社の協定のみで十分 出向社員に対する労働基準法等の適用関係については、ちょっと長いですが、行政解釈が示されています(昭61・6・6基発第333号)。それによれば、「在籍型出向の出向労働者については、出向元および出向先の双方とそれぞれ労働関係があるので、出向元および出向先に対しては、それぞれ労働契約が存する限度で労働基準法等の適用がある。すなわち、出向元、出向先および労働者の3者間の取り決めによって定められた権限と責任に応じて出向元の使用者又は出向先の使用者が出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負う」という解釈になります。 それぞれの権限に応じて、使用者が出向元になったり、出向先になったりするので、話は単純ではありません。安西愈「企業間人事異動の法理と実務」という書物の中に適用関係が整理されているので、これを基に説明しましょう。 フレックスタイム制(労基法第32条の3)の場合、出向先が使用者とみなされます。ですから、貴社で適法に労使協定が結ばれていれば、出向者にフレックスタイム制をそのまま適用できます。出向元に労使協定があるか否かに関係なく、責社の従業員と同様に扱って差し支えありません。特別な手続を取る必要もありません。 三六(さぶろく)協定についても、使用者は出向先になります。ですから、出向元に協定がなくても、あるいは出向先の協定時間より短くても、それとは無関係に、出向先の協定限度時間まで時間外・休日労働をさせることができます。 紛らわしいのは、派遣社員のケースです。出向と同じように他社に籍を置く社員を自社の職場に受け入れるわけですが、労基法の適用関係は異なります。 フレックスタイム制、時間外ともに、協定を結ぶべき使用者は、出向元と定められています。ですから、派遣社員をフレックスタイム制の職場に配属するときは、出向元に対し、フレックスタイム制の協定があるか否かを問い合わせ、なければ新たに締結してもらう必要があります。時間外をさせる場合にも、出向元の三六協定の有無、限度時間等を確認しなければなりません。 出向社員と派遣社員と、常に扱いが違うわけでもありません。 たとえば、従業員数50人以上の事業場では、安全・衛生管理者、産業医を選任する義務が生じます。この50人のカウントには、出向社員も派遣社員も含めます。 このように適用関係は一律でないので、法の条文ごとに、出向・派遣元、出向先・派遣先のどちらが使用者になるのか、適宜、確認すべきです。
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