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労働者派遣契約の破棄 (2006年11月号より抜粋) | |
ユーザー企業の都合で派遣社員を辞めさせるときは解雇予告手当が必要? |
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Q |
突然、縁故採用の話が持ち上がったため、現在、派遣労働者が担当しているポストを割り当てる方向で検討しています。派遣労働者には辞めてもらうほかないのですが、当社の責任ですから、解雇予告手当の支払が必要でしょうか。 |
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派遣元への損害賠償が必要な場合も 労働者派遣の場合、雇用契約は派遣元(人材ビジネス会社)と労働者の間で結ばれています。貴社と労働者の間には、指揮命令関係が存在するだけです。ですから、貴社には派遣労働者を解雇する権限はなく、正確には、派遣元との間で結んだ労働者派遣契約を破棄することになります。 派遣契約が解消されても、派遣元と労働者問の雇用契約は引き続き存在します。派遣元は、他に派遣先を探すか、休業手当を払うか、あるいは解雇するか、決断を迫られます。契約期間の途中で解雇するときは、労基法第20条の解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支払う義務を負います。解雇予告手当を払うのは、貴社ではなく、派遣元という結論になります。 それでは、貴社として、後の処理をすべて派遣元に委ねればよいかというと、そうとも限りません。派遣法第26条は派遣契約の内容を定めていますが、その第8項に「契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な事項」が挙げられています。派遣先(貴社)が講ずべき「雇用の安定を図るために必要な措置」は、「派遣先の講ずべき措置に関する指針」(平11年労働省告示第138号)に示されています。
このうち4.については、次のような説明が付されています。「就業機会の確保ができないときは、30日前に予告を行わなければならない。予告を行わない派遣先は、30日分の賃金に相当する額について損害賠償を行わなければならない、予告期間が30日に満たないときは、不足した日数分の賃金を支払わなければならない」。労働基準法の解雇予告の規定とよく似た内容です。 労働者派遣契約を結ぶ際、「雇用の安定を図るために必要な事項」について、どのような約束があったか確認してください。契約内容によっては、貴社が賃金30日分の賠償義務を負うおそれもなしとは言えません。この場合、派遣元はそれを原資に、労働者に解雇予告手当を支払います。 形式的にはともかく、実態的には、貴社が解雇予告手当を支払ったと同じ結果になります。派遣労働者は、派遣先の対応によって不安定な立場に立たされる危険があるため、派遣法に一定の保護規定が設けられています。「後は野となれ」では済まないケースもあり得るので、注意が必要です。
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